仕事をもらう代償が6時間のマンスプレイニング
宮田 わかります。私が若い女の子だからという理由で、「どうせ理解できないだろう」という前提で、こちらが尋ねても、法的なことや経済的な説明を端折られたりすることを何度も経験しました。けっこうカチン!ときますよね。中高を通して女子校で「女の子は世界を変えられる」と教わってきたのに、いざ社会に出るとこんな扱いを受けるのかとショックを受けることもありました。
でもそんな時、私は文学部出身で口が達者なので、「どうして大学で4年間勉強してきた私が理解できないと決めつけるのですか?」とはっきり伝えています。「別にそういう意味ではなくて~」とはぐらかされてしまいますが、自分が仕事をがんばることで対等に理解できることを示していくしかない。
小川 そんなことがあったんですね。私も宮田さんと同じような悔しい思いをしたことがあって、昔すごく偉い編集者の人が来て「君に仕事をあげよう」みたいに言われたんですが、その仕事をもらう代償が6時間黙って彼の講釈を聞くことでした。「君は知らないだろうけどさ」みたいなマンスプレイニングがあまりにもきつくて、これから仕事をもらうたびにこんな目にあうなら、もう研究者をやめようと思ったほど。
スケザネ そんなことがあったんですね…。
小川 自分の苦い経験もあって、私はまわりでマンスプとかハラスメントのターゲットになっている女性がいるとすぐ気づくんですよ。苦しい思いをしているのに立場上、声を上げられない当事者の人たちもたくさんいます。そんな時、その状況に気づいた周りの人が「共事者」――これは小松理虔さんの言葉ですが――となって声をあげるのが大事なんじゃないかと考えています。
アイドルの先輩がくれた“共事者”的なケア
宮田 それでいうと、アイドル時代に私は握手会で、あるファンの方から毎回辛辣な言葉をかけられていて、とてもしんどいと先輩に相談したことがありました。そうしたら、そのアイドルの先輩が私の代わりにそのファンの方に、「そういうことを毎回言っていると、本当に怒るよ!」って直接バシッと言ってくれて。相手の方は「そ、そうなの、ごめんね」みたいな流れになって、丸く収まった。
だからそれ以降、私も後輩とペアになった時など、なにか棘のある言葉を言われてたら「いまの大丈夫だった?」って聞くとか、見ていてきつそうな時は「マネージャーさんにあとで言っておくね」とか、困っている仲間がいないか気にかけるようになりました。
小川 まさに共事者としてのケアの実践例ですね。アイドルという職業は、男性に気に入られるタイプの性格だったり可愛さだったり、押し付けられるイメージも多いと思うのですが、そのあたりの葛藤などはありましたか?
宮田 アイドルの自分は、もう自分とは完全に切り離していて、「アイドルの仕事をしている時の私はファンのもの」というスタンスでやっていましたから、その葛藤はあまりなかったと思います。往復書簡の中でスケザネさんは、「アイドルは来訪神みたいなもの」と見立ててましたが、それでいえばアイドルは神(笑)。だから、神に対する言葉遣いじゃないだろうって時はファンに対してもピシッと咎めてましたよ!
スケザネ 天罰がくだるわけだ。
小川 メンタルが強いですね(笑)。
(その2へ続く)


