ロマンあふれる「寝台列車」、なぜ廃れた?

 かつて東京や大阪からたくさんの寝台列車が走っていた。九州、東北、北海道方面、東京からは北陸方面もあったし、東京~大阪間の寝台列車もビジネスマンに人気があった。

 しかし、その数はどんどん減って、現在の定期列車は東京~出雲市間の「サンライズ出雲」、東京~高松間の「サンライズ瀬戸」だけとなった。理由は巷間で言われているように、新幹線や航空路線の低価格化、高速路線バスの台頭、ビジネスホテルの普及だ。

 鉄道会社の事情で言えば、一定の乗客数があっても、車両が老朽化しており、新型車両に置き換えるほどの投資効果が見込めない。夜間の保線時間の確保、貨物列車の増発もある。あえて言えば運賃料金政策の失敗もある。

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 客車時代のもっとも安いB寝台料金は個室も2段ベッドも約6500円。この値段ならビジネスホテルに泊まれるし、ホテルの設備と比べたら寝台車の設備は見劣りする。しかし特急料金は「600キロ以上」の区分が上限で、それ以上どれだけ走っても金額は変わらない。

 もし特急料金を夜行列車に見合う形で800キロ以上、1000キロ以上と設定し、その上昇分を寝台料金から差し引けば、寝台料金は3000円程度に下げられたはずだ。寝台料金は設備の対価と見られるから、ビジネスホテルに「低価格簡易設備」として対抗でき、特急料金の上昇分で総額は同じというやりかたもできた。それをしなかった理由には、寝台列車に対する諦めがあったかもしれない。

「ブルートレイン」の列車名はJR東日本の登録商標になっているが、今回あえて「ブルートレイン」と呼んでいない理由は「寝台列車」ではないからだろう(JR東日本報道資料より)

「新たな夜行特急列車(以下、シン夜行列車)」はその経験があるからか、寝台列車とはしなかった。社長会見では「東京から新青森まで(東北新幹線の)グランクラスに乗ると3万740円、グリーン車で2万3740円になる。これに若干プラスしたくらいの価格」を想定しているとした。団体ツアー列車として価格設定するか、特急料金、グリーン料金を改定するかは明らかにされていないが、いずれにしても「寝台料金」はなく、ホテルとの比較は避けた。