新たな夜行特急には、どんな客室ができるのか?
今回発表したシン夜行列車では、ひたち・ときわとして走る車両の室内をまるごとリフォームして、客室はすべて個室とする。
リフォーム後は1人用、2人用、4人用の個室があり、座席はフルフラットタイプ。つまり、寝台列車ではないものの寝転んで利用できる。しかし枕やシーツ、毛布はない。だから「新たな寝台特急」ではなく、「新たな夜行特急」というわけだ。社長会見によると「山手線のどこかの駅を午後9時頃に出発して、青森に翌朝9時頃到着」を想定している。
1編成しかないから、毎日運行する定期夜行列車にはならない。不定期で金曜夜に都内を出発し、翌朝に目的地に到着。日曜夜に目的地を出発し、月曜の早朝に都内に戻る列車になるだろう。このダイヤなら週末に東北を旅して、月曜から学校や勤務先へ向かい、日常生活にスイッチできる。
JR東日本はこのシン夜行列車で2つのチャレンジをする。1つは「鉄道版ナイトエコノミー」であり、もう1つは「東北観光の活性化」だ。
寝台列車は消えつつあるが、夜行列車はニーズがある
そもそも「寝台列車」が一時期に比べて大幅に減少したのは事実だが、JR各社は「夜行列車」を諦めたわけではなかった。
例えば高単価にシフトしたクルーズトレインは列車で泊まって移動するという「特別な体験」に付加価値を見出した料金設定で生き残っている。また、寝台列車と夜行路線バスの隙間に注目し、多客期の臨時夜行列車を設定している。
かつて夜行普通列車、夜行快速として低単価だった列車が廃止され、しばらくして「夜行特急」として復活した例もある。特急扱いにして料金収入を増やしたわけだ。利用者から見て夜行バスより高くなったけれども、窮屈さがない移動手段として人気を博す。
JR東日本でも2023年に臨時特急「諏訪湖花火大会号」が上諏訪発新宿行きで設定された。2024年には、臨時特急「アルプス」が新宿発白馬行きも設定している。どちらも特急用座席車両で片道のみ。
定期運行の寝台列車ほど需要があるわけではないけれども、イベントがあるタイミングで周辺に宿泊施設が少なく、あったとしても高額なリゾートホテル……という場所ならば、需要があるわけだ。







