すでにいくつもの「成功事例」がある
JR東日本にとって、東北での成功例の一つが「リゾートしらかみ」だ。
秋田~弘前・青森を五能線経由で結ぶ列車で、前身は1990年運行開始のトロッコ列車「ノスタルジックビュートレイン」。五能線は青森県の日本海側を走る路線で、海岸線ギリギリの崖を走るところから眺望に定評があった。1997年に秋田新幹線が開業し、同時に展望コーナーを備えた観光車両「リゾートしらかみ」となった経緯がある。
その後、2010年に東北新幹線が全線開業すると秋田新幹線で秋田に行き、リゾートしらかみで青森に至り、東北新幹線で帰るというゴールデンルートが完成した。観光列車単体ではなく、往復の新幹線を含めて利益をもたらす形だ。2001年に羽越本線で運行を開始した「きらきらうえつ」も上越新幹線と接続する列車で同じく好調。2019年に新造車両の「海里」に交替している。
2011年に発生した東日本大震災から復興を目指し、東北観光のシンボルとして開発された列車がクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」だ。3泊4日コースで1人当たり旅行代金が100万円前後となる豪華列車で登場当初は耳目を集めた。沿線自治体の協力を得て、主要観光地で乗客をもてなす取り組みも話題になった。
このTRAIN SUITE 四季島の妹分といった位置づけで「カシオペア紀行」も活躍した。1999年に上野~札幌で運行開始し、全室A寝台個室という豪華寝台列車だった「カシオペア」の後継列車だ。
カシオペアが北海道新幹線の開業によって青函トンネルの通行が困難になり、運行を終了したことを受けて誕生した。臨時団体列車として東北、信州方面で活躍し、車体の老朽化にともない、2025年6月に引退している。
JR東日本のシン夜行列車は、こうした先輩列車たちの実績を受け継ぐ形で誕生する。TRAIN SUITE 四季島は、出発地から帰着地までセットになっていて、それもいいけれど、乗客の行程を拘束してしまうところが難点だ。シン夜行列車は片道運行を中心とし、利用者に現地観光を促し、東北の経済を潤す列車として期待したい。
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