「1年頑張ってみて、アイドルとして売れたら大学を辞めます」

――そしてオーディションに合格し、SKE48に8期生として合格します。一方でもともとアイドルになりたかった妹の萌夏さんはこの時のAKB48オーディションでは最終まで進みながら落ちてしまいます。気まずくはありませんでしたか?

矢作 気まずいなとは思っていました。でも妹はまだ中学生でしたし「若いから今度受ければ大丈夫だよ」と言っていました。さすがに泣きつかれはしなかったですけど、今考えるとたぶん妹は陰で病んでたと思います。

――萌夏さんも翌年にはAKB48に入りますし、矢作さんの言葉は正しかったですね。矢作さんは歯大生として多忙です。アイドルとの両立を考えると心配になりませんでしたか。

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矢作 合格した時、最初に浮かんだのは「大学どうしよう」でした。合格の辞退もすごく考えました。当初スタッフさんから「大学を辞めるか、アイドルを辞退するかどっちかだ。生半可な気持ちでやるな」と言われていて。

 そこで休学すればとりあえず1年間は猶予ができると考えて。SKEのスタッフさんには「じゃあ1年後はどうするんだ」と迫られたんですけど、「1年頑張ってみて、アイドルとして売れたら大学を辞めます」と伝えました。

©山元茂樹/文藝春秋

 ただ歯科大を1年間休学するには300万円も支払わなくちゃいけなくて。母はお金のこともあってすごく悩んでいましたが、最終的に「投資だね。その代わり、将来返してね」と言って、休学を許してもらいました。東京からSKE48の劇場がある名古屋に通うには時間的にも金銭的にも大変なので、名古屋に引っ越して、初めて一人暮らしをしました。

上下関係が厳しく、先輩は年下…ダンスもスパルタのSKE

――アイドルとしての活動をスタートさせたわけですが、同期の8期生はかなり年下ですよね。

矢作 同期だと倉島杏実ちゃんは当時は小学生でしたし、井上瑠夏ちゃん、野村実代ちゃんとみんな私よりずっと年下でした。大変だったのがSKE48の先輩も年下だったことです。中学生だった先輩にも敬語を使ってました。移動のバスの席でも後輩は補助席でした(笑)。SKEは上下関係が厳しいグループでした。

――ダンスの練習などはどうでしたか。思い描いていたものと実際やってみてのギャップなどはありましたか。

矢作 SKEはすごく体育会系で、そこにびっくりしました。私の中でアイドルって、もっとキャピッとしていればダンスもそこそこでいいのかなって思ってたんですけれど、実際は女子ダンス部みたいなスパルタで。つらくて結構泣いたりとかもしてました。

 私はそれこそ文化祭で踊ったくらいしか経験はなかったんですが、周りはダンス経験者ばかりで。しかも若い子ってすぐ振り付けを覚えられるんですよ。でも私は全然覚えられなくて。そこでもすごく苦労しました。

――その状況だとアイドルを辞めたくなりません?

矢作 結構初期で辞めたいと思いました。私はデビューしてすぐにシングルの選抜メンバーに選ばれたんですが、それでさらに風当たりが強くなってしまって。

次の記事に続く 「もうやめたい」と言ったら先輩・松井珠理奈から突然電話が…現役歯大生でSKE48だった矢作有紀奈が語る“アイドル時代につらかったこと”

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