現在、都内のクリニックで働く歯科医の矢作有紀奈さんは、歯大生時代にSKE48のオーディションを受け合格し、一時期は歯大生とアイドルを両立した異色の経歴の持ち主だ。

 SKE48加入後すぐにシングルの選抜メンバーに選ばれた矢作さんだが、そのことが逆に人間関係をギクシャクさせたという。歯大生とアイドルの両立の苦労から、SKE48を卒業した理由まで明かしてくれた。(全3回の2回目/続きを読む)

SKE48の元メンバーで現役歯科医の矢作有紀奈さん ©山元茂樹/文藝春秋

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「精神的にきつかった」時代、松井珠理奈から突然の電話が…

――矢作さんが選抜メンバーに選ばれたのは2017年7月に発売されたシングル『意外にマンゴー』でしたね。研究生からの大抜擢でした。

矢作有紀奈さん(以下、矢作) 選抜メンバーの方々は当然、みんなダンスのレベルが高いんです。その中に、曲も知らない、ダンスも踊れない私が入って、先輩たちと同じものをこなさなければいけなくなってしまって。

 たとえば「じゃあ明日のイベントのために今から、数曲の振り入れをするので徹夜で覚えてください」と言われて。ダンスの振りだけじゃなくて、踊る際のフォーメーションも覚えないといけないんですよ。それを覚えるためにものすごく画質の悪いDVDを渡されるんですけど、画質が悪くて全くわからないんですよ。

 案の定、曲の振り合わせの時には動線とかがわからないので先輩にぶつかってしまったり。「踊れないのになんであの子が選抜なの?」とか冷たい目線を浴びて。選抜という責任を実感していました。

――お話を聞いているとかなり精神的にきつかったんじゃないですか。

矢作 メンタルを病んでいたのか自覚はなかったんですけど、ストレスでケーキをワンホール食べたりしてすごく太りました。

――SHOWROOM配信で「もう辞めたい」と話したこともありましたね。

矢作 配信で言っちゃいました。そうしたら、先輩の松井珠理奈さんから突然、電話がかかってきたんです。当時は面識がなかったのですごくびっくりしました。珠理奈さんは電話で「私も小学生の時にAKB48の選抜になって辛い思いもしたから、すごい気持ちは分かるよ」と1時間くらいいろいろと話してくださって。こんな下っ端にも時間を割いてくれて、すごくメンバー思いなんだなって感じました。

 珠理奈さんはその後も、私が崩れそうになってると察知して話しかけてくれました。どうして気づいたのか。グループ全員を見渡す力がすごかったですね。

――SKE48としての活動は続きますが、グループには徐々に慣れていったんですか。

矢作 うーん、同期とは全然関係は良好なんですけど、先輩とどう接したらいいのかがわからなくて。先輩側の気持ちもわかるんです。後輩が小学生、中学生だとすごくかわいがることもできるじゃないですか? でも後輩が同い年だったり年上だとコミュニケーションって取りづらい。そうした部分もあって、溶け込みづらかったというのはあるかもしれないです。