「任天堂ユニバース」を形成しているからこその作品

『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズが実現できたのは、自社開発をおこなうだけでなく、セカンドパーティやサードパーティの作品も合わせて任天堂ユニバースを形成しているからであり、このゲームに登場する各キャラクターが任天堂の代名詞として長い歴史を築いてきたからだ。

 そして、プレイするのも楽しい。お馴染みの主人公や敵役のラインナップからキャラクターを選ぶことができる。

 このシリーズは、各キャラクターが「スマッシュブラザーズ」向けに翻案(アダプテーション)されながらも、それぞれの作品やゲーム体験とのつながりが感じられ、それが強固な基盤となっている。

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 さらに、研究者のリンダ・ハッチオンが『アダプテーションの理論』(2006)で論じているように、観客はある形態で愛したものが別の形態で登場するのを目にすると、喜びや興奮を感じる。

 そのため、このゲーム専用に生み出された別のキャラクターでも楽しめただろうが、そうするとゲームの奥に広がる確固たる世界を感じられなくなり、ここまでの大ヒットにはならなかっただろう。

マリオやルイージくらい、クッパやワリオに馴染みがある

 各作品とのつながりがなければ、ゼルダのリンクはトライフォースを持っていなかったかもしれないし、サムスも腕にアームキャノンをつけていなかったかもしれない。しかしそうしたアイテムがあるからこそ、それらが何を意味するものであり、元のゲームで何を象徴するものかを知っている人たちとの仲間意識が生まれるのである。

 敵役をプレイできることも似たような効果を生んでいる。プレイヤーはマリオやルイージと同じくらい、クッパやワリオにも馴染みがある。そのうえ、このゲーム内でも敵役たちはユーモラスだ。

 宮本が初期作でドンキーコングを滑稽なゴリラとしてデザインしたように、敵役に対する怖さが取り除かれている。