青山氏が上手いのは、墜落について自衛隊や国家の関与を断定はしていない点だ。あくまで「仮説」としている。だが、その仮説に基づいて延々と話を進めており、続刊でもそれが前提となっているため、読む者には自衛隊が墜落に大きく関与し、国家がそれを隠蔽したという印象を与える作りになっている。

©橋本昇

 例えば、『日航123便墜落の新事実』には、墜落当初多数の乗客がまだ生存していたという証言が載っているが、発見された黒焦げの遺体は自衛隊あるいは米軍が火炎放射器で焼いたという推測も書かれており、これでは火炎放射器で乗客は生きたまま焼かれたと読者は思わされるだろう。

河出書房新社が掲載した“読者の声”には…

 これは筆者だけの思い込みではない。版元の河出書房新社サイト内の「この本に寄せられた“読者の声”です」には、次のような感想が掲載されている。

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果たして520名のご遺族の方、生還された(自衛隊に発見されず火炎放射器に焼かれなかった)4名の方もこの本はお読みになられたのでしょうか?

 版元の読者の声に載るくらいだから、代表的な感想だったと思われる。このように青山氏の著作には、断定を避けながらも自衛隊、国家が墜落に関わったというナラティブ(物語)に読者を誘導する作りになっている。

自衛隊のF-4EJ戦闘機 ©時事通信社

 しかも、前述した故森永卓郎氏が出された著書『マンガ 誰も書かない「真実」 日航123便はなぜ墜落したのか』(宝島社)に青山氏は監修として関わっているが、F-4戦闘機がミサイルで日航機を撃墜したり、中曽根康弘首相(当時)が火炎放射器による証拠隠滅を指示するシーンがハッキリと描かれている。その後で「仮説です」と言っても、読者に与えるインパクトは計り知れないだろう。

 他の「読者の声」をみてみよう。

・国家による犯罪が、事実であっても、実に被害者は、悔しいとおもいますが、国会、内閣の金配り、情報操作、工作活動には太刀打ちできないとおもいます。

・でもこんなひどいことが行われていたとは。ショックです。

・嘘で塗り固め隠蔽された重大事件。知らなかった自分は戦慄を禁じ得なかった。

・どこかの国なら映画化されるだろうか?いや米軍、自衛隊が関わっていては無理だろうか。

・この本の内容を信用したいですが、出版後なぜ出版社や著者が抹殺されないのか。

 版元がこれらの感想を紹介している以上、そう読まれるのが自然ということなのだろうが、青山氏はあくまで仮説だと主張している。しかし、著作の中で青山氏は仮説に仮説を重ねた上で、政府の非道に怒り、違法な命令を拒否できぬ自衛官を嘆き、日本社会の風潮を憂いている。これでは、「読者の声」に寄せられた感想がああなるのも、無理からぬことだろう。