築90年超の駅舎がのこる「松代」

 長野電鉄のバスは、廃線跡に沿うように走る。東屋代駅、雨宮駅、岩野駅と小さな集落を抱える廃駅をひとつずつ。

 もちろんバスだから、それ以外にもいくつもの停留所にきめ細やかに停まってゆく。といっても、乗っているお客はほとんどいない。平日の真っ昼間、バスに乗って出かける人は少ないのだろう。

 

 南からは山が迫り、北側には千曲川が流れる。集落や田畑の向こうには、上信越自動車道の高架が見える。バスは集落の中の小さな道を走ったり、近くの国道を走ったりとあっちへこっちへ。

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 それでも廃線跡がどこにあるのかは、集落の中に細長い空き地が目立っているからよくわかる。

 そうして象山の登山口に近い象山口駅跡を過ぎると、松代駅だ。

松代駅

 開業当時からの古い駅舎が残り、レールは剥がされて駐車場になっているけれどホームまで残っている。

 

 ホームに立って駐車場の奥を望めば見えるのは真田氏10万石の松代城。言うまでもなく、松代の町の玄関口、ターミナルだ。

 
 

 戦争末期、松代に大本営が造られたときには、松代駅には20両もの貨車が資材を積んでやってきたという。

 そのため、長野電鉄の人たちは何の事情も分からないままに突貫で拡張工事を強いられた。いま、ホームの向こうに広がっている広大な駐車場も、その痕跡のひとつなのだろうか。