「『私はお金とかじゃなくて、声優になって人を感動させたいんです』みたいな寝ぼけたことを言っている人には、『そうじゃないでしょ』と。まずは前提として、声優という職業なんです」(岩田光央)

 新人・若手声優が生き残るためには、どんな「心構え」を持つべきか? 音響監督歴58年、レジェンド的存在である明田川進氏の新書『音響監督の仕事』(星海社)より、ベテラン声優・岩田光央氏との対談パートを一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)

写真はイメージ ©getty

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声優は「個人事業主」である

――岩田さんは、著書『声優道 死ぬまで「声」で食う極意』を出されていますよね。

岩田:夢見がちな憧れの存在としての「声優」ではなく、「職業としての声優」を目指すための1冊になればと思って出しました。僕自身、社会人としての職業として声優を選んで生きていますし、さらに一般的なカテゴリーでいうと、声優は個人事業主なんですよね。

明田川:たしかに個人事業主だよね。

岩田:声優を目指した時点でもれなく個人事業主がついてくるんです。では個人事業主とはなんなんだということを、声優を目指すのならばみんなもっと理解しないといけないと僕は考えています。「私はお金とかじゃなくて、声優になって人を感動させたいんです!」みたいな寝ぼけたことを言っている人には、「そうじゃないでしょ」と。まずは前提として、声優という職業なんです。そしてプロの声優は人を感動させることが当たり前であって、それができなくちゃお金をもらえない。これからあなたは個人事業主という立場で生きていかなきゃいけないけれど、その覚悟はあるんですか? と問いたかったんです。

明田川:岩田さんの本が面白いのは、声優を目指している人向けの内容だけではないところですよね。僕が読んできた範囲だと、声優志望者向けの本はだいたい同じことが書かれている印象ですが、岩田さんの本はそこが違っているのがいいなあと思って、当時一気に読んでしまいました。

――明田川さんも声優志望の人から相談をうけることが多いと思います。どう答えられるのでしょうか。