日本を動かす官僚の街・霞が関から“マル秘”情報をお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。最新号から、ダイジェストで紹介します。
◆◆◆
エースのイメチェン
畝本直美検事総長(昭和63年、検事任官)の後継総長人事がほぼ固まった。
法務省は7月17日発令の人事で、勇退する斎藤隆博東京高検検事長(平成元年)の後任に川原隆司法務事務次官(元年)を、さらにその後任に「検察のエース」といわれる刑事局長の森本宏氏(4年)を起用。2人が順番に検事総長を務める公算が極めて大きくなった。
検事総長人事は、実績もさることながら任官年次と年齢が重要だ。川原氏は慶應大、森本氏は名古屋大在学中に司法試験に合格しており、現役同期の中では飛びぬけて若い。両氏が総長に就くのはしごく順当ともいえるが、こと森本氏については紆余曲折があった。
若いころから検察現場、法務行政の両方をこなせる有能検事と評され、東京地検特捜部副部長を経て、エリートコースの法務省刑事局刑事課長、総務課長を歴任。特捜部長時代には、導入されたばかりの日本版司法取引を駆使してカルロス・ゴーン事件を摘発。河井克行元法相夫妻の公選法違反、秋元司衆院議員のIR汚職など政界事件にも次々と切り込んだ。
2021年7月には歴代総長の多くが務めた、検察のスポークスマン役である東京地検次席検事に就任。川原氏が刑事局長から総長コースの法務次官に昇格した23年1月には後任の刑事局長に栄転するとみられていたが、刑事局長に起用されたのは一期下の松下裕子氏(5年)。22年6月に退官した林真琴元検事総長(昭和58年)が刑事局長だった時代、同局総務課長などを務めた林氏直系だが、検察現場、法務行政でも森本氏ほどの実績はなかった。
森本氏は、格上とはいえ、検察現場を取り仕切る最高検刑事部長に据えられ、検察部内でも、次官就任、検事総長の道は遠くなったと受け止められた。やや強引ともいわれる捜査手法や、特捜部長、次席検事時代に散見された、意に沿わぬ質問をする記者を怒鳴りつけるコワモテのマスコミ対応が響いたとの指摘もあった。
《この続きでは、森本氏の人物評を元検察幹部が語っています》
※本記事の全文(約5800文字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年9月号に掲載されています(霞が関コンフィデンシャル)。
★財務省に潜む爆弾
「財政規律派の守護神」たる森山裕幹事長の神通力を失った先に待ち受けるのは、同省にとって悪夢以外の何物でもない…
★うつむく官邸
選挙で負け続けた首相に求心力はなく、秘書官や官邸官僚たちの表情も冴えない。リーダー格の中島朗洋秘書官(5年、旧大蔵省)も例外ではなく…
★平成元年組の明暗
化学機械メーカー「大川原化工機」に対する警視庁公安部外事一課による捜査の違法性が認められ、6月11日、同社の冤罪が確定…
■連載「霞が関コンフィデンシャル」
1月号 「壁」を巡る同期の攻防、「岸田議連」の火種、元首相秘書官に“赤紙”、1年延期の新次官
2月号 野党対策の黒子たち、官邸に漂う閉塞感、総務官邸官僚の実力、次期警察人事の行方
3月号 経産省が込める“実弾”、新次官と首相の距離、財務相を支える女性たち、インサイダーの“余波”
4月号 財務省の“切り札”、森山印の次官レース、日米会談の余波、燃え盛る厚労省
5月号 試される牛若丸、パワハラ騒動の余波、多士済々の5年組、プロパー会長の行方
6月号 新川次官続投のけじめ、「赤澤訪米」の余波、イケメンの“天の声”、NHKの“品質保証”
7月号 「コメ次官」は誰に?、年金改革の余波、“マフィア”の系譜、肥大する内閣官房
8月号 “フッ軽”の新経産次官、主税局長留任の決意、小泉農水相のブレーン、「首相肝煎り」の迷走
9月号 今回はこちら
【東京地検特捜部に関連した記事を「文藝春秋PLUS」で多数配信中】
ロッキード事件捜査 カミソリ検事が明かした異常な命令
事件の核心「P3C疑惑」はなぜ封印されたか ロッキード事件が発生して50年がたつ。日本の総理大臣・田中角栄に対し、米国政府の軍部・情報機関と深いつながりのある米国の航空機メーカー、ロッキード社から1…

特捜部はなぜ五人衆を逮捕できないか
「政治資金規正法はザル法だ」検察OBが緊急提言! 1月19日、自民党の政治資金パーティー裏金問題について、東京地検特捜部は各派閥の会計責任者ら事務方のほか、7日に逮捕された池田佳隆議員(起訴は26日…

出典元
【文藝春秋 目次】大座談会 保阪正康 新浪剛史 楠木建 麻田雅文 千々和泰明/日本のいちばん長い日/芥川賞発表/日枝久 独占告白10時間/中島達「国債格下げに気を付けろ」
2025年9月号
2025年8月8日 発売
1800円(税込)



