日本を動かす官僚の街・霞が関から“マル秘”情報をお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。最新号から、ダイジェストで紹介します。

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平成元年組の明暗

 日本警察のシンボル、警視庁の威信が揺らいでいる。化学機械メーカー「大川原化工機」に対する警視庁公安部外事一課による捜査の違法性が認められ、6月11日、同社の冤罪が確定した。

 警視庁が同社の社長らを逮捕したのは2020年3月、さらに同年5月に再逮捕。東京地検はいずれも起訴していたが、立証が不可能だとして初公判直前に起訴を取り消していた。逮捕、起訴時の警視庁トップは斉藤実警視総監(昭和60年、警察庁)、捜査指揮の責任者は近藤知尚公安部長(平成元年、同)だった。

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東京地検の森博英公安部長(左端)と警視庁の鎌田徹郎副総監(左から2人目)が大川原化工機側に謝罪した ©時事通信社

 斉藤氏は皇室の警衛、政治家らの警護、サミットなどの大規模警備のプロ。東京五輪が開催予定だった20年に警備の最高責任者として警視総監に着任。コロナ禍で翌年に延期となっても警視総監として警備の陣頭指揮にあたった。

 近藤氏は対日有害活動を行うグループの情報収集をはじめとするインテリジェンス部門を担い、警視庁公安部長のほか警察庁外事情報部長などを歴任、警察大学校校長で退官した。英ロンドンで在外公館での勤務時には、流暢な英語で堂々と意見を述べる対応ぶりに現地の治安当局の幹部が唸ったとの逸話も残る。

 キャリア組の選抜試験である国家公務員I種試験(現・同総合職試験)に1位で合格した近藤氏は、「超エリート」として霞が関界隈では知られていた。警察庁で「平成元年入庁組」といえば、精鋭揃いとの評を得てきた。楠芳伸警察庁長官も同年採用で、早くから「長官候補」と目されてきた。元年組では18年に急逝した今井勝典氏も3位合格で、いずれも大蔵省が喉から手が出るほど欲しがった逸材だった。

 入庁から十数年を経て、楠氏と近藤氏の立場は明暗がくっきり分かれた。

この続きでは、大川原化工機への謝罪で起きた“ひと悶着”に言及しています》

※本記事の全文(約5800文字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年9月号に掲載されています(霞が関コンフィデンシャル)。

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出典元

文藝春秋

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