客室乗務員の仕事は好きだったけど…復帰したい気持ちは「もうぜんぜんない」

――筋トレして頑張って入社されて、入社後もいくつも資格を取得されて、4年間勤められた航空会社をお辞めになる。仕事を手放すという選択に、不安などはなかったですか。

西岡 いいのかなあ、大丈夫かなという不安はありました。でもどちらかというと、新しい料理の仕事をやってみたいという気持ちのほうが大きかったです。

 客室乗務員の仕事はすごく好きでしたし、また飛びたくなることもあるのかなと思っていたのですが、それはもうぜんぜんない。客室乗務員がいやだということではなく、料理がすごく楽しいっていうところなんだと思います。

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©︎榎本麻美/文藝春秋

――西岡さんのレシピは野菜をたっぷりとれるだけでなく、旬の食材を取り入れた食事で体を整えるという、薬膳や栄養面でも説得力があります。

西岡 エコールエミーズに通っていたとき、おまけのように2コマくらい、薬膳の授業があったんですね。薬膳はハードルの高いイメージだったのですが、それを見事にくつがえされるような授業で、いつもの食材が薬膳になり得るんだって。面白い、もっと勉強したいという気持ちが湧き上がってきて、卒業したら学校に通っちゃおうと思いました。

 それで、北京中医薬大学(当時)という、薬膳の学校に1年間通いました。

アメリカで話題になっている「パワーサラダ」を監修

――いまアメリカで話題になっている「パワーサラダ」の監修もされていましたよね。「ハイファイブサラダ」という専門店の。

西岡 それこそ北京中医薬大学に通っているときに、突然先方から連絡があったんですよ。どうすれば料理の仕事ができるんだろうと必死にもがいてる時期で、フードアナリストの資格をとるために講座を受けたりもするなかで、自分なりにほそぼそと続けていたアメブロに、「サラダ屋さんをやりませんか」ってメッセージが届いて。

 まだ店名もなかったタイミングで、なんて怪しいんだろうと(笑)。お返事をしていなかったら、知り合いの知り合いから「メッセージを送ったんですけど、読みましたか?」と連絡がきて、初めて実在する話なんだと知りました。そこから1年くらいで「ハイファイブサラダ」を立ち上げて、お店とコラボレーションした『パワーサラダレシピ』という書籍を出版させていただいて。

――私事ですが、仕事が忙しくてしんどいとき、たまに栄養補給に行ってました。サラダってあまり量を食べられないイメージだったのが、野菜のほかにもお肉やナッツやチーズが詰め込まれていて、ドレッシングの味付けもおいしくて、ボリュームがあるのにぺろりと食べられて、すごく救われてました。

西岡 めちゃくちゃうれしいです。

「葉物を加えず、フルーツが入ったサラダ。サラダは自由で良い! という考えを大切にしています。写真は赤パプリカにコンビニなどで売っている冷凍マンゴーを合わせたもの」(本人提供)

――なので勝手に、客室乗務員時代の不規則な生活でしんどかったかつてのご自分のような女性を、食で救いたいというお気持ちで、ご活動をされているのかなと。

西岡 元気なときはなにを食べてもおいしかったり、幸せだったりすると思うんですけど、やっぱり心身がマイナスな状態って、誰にもでもあると思うんですよね。私自身もありますし。そういうときに、これなら食べられるなとか、体がほっとできるような料理がすごく大事なものになると思っていて、そこに訴えられるようなレシピを大切にしています。