産後2カ月で「世界一受けたい授業」に出演

――料理家として、いちばん最初の仕事は覚えていますか?

西岡 先ほどお話ししたフードアナリストの資格をとるために通っていたセミナーで、たまたま隣に座っていたのが、料理メディアの「Nadia」に勤めていた方で、いろいろお話をするうちにひとつお仕事をいただいたんですよ。ヘルシー系のパウダーをつかったレシピを再現するというもので、パンケーキとか、パスタとか6品ぐらいつくって、スタイリングをして、撮影までおこなうという。

 実績もなにもなかったので、とにかく頑張らねばと、器とか天板を一気に買い揃えて、もう必死でやりました。夫が写真好きで、一眼レフカメラを貸してもらって、自宅で撮影をしました。

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――西岡さん、お子さんは?

西岡 息子がいま、5歳です。ちょうど『パワーサラダレシピ』を出版したくらいに出産したんですよ。それで、産後2カ月に、「世界一受けたい授業」という日本テレビさんの番組から、パワーサラダを紹介するというお話をいただいて、出版社の担当の方からも「産後だけどこんな機会はなかなかないですよ」と言われて、「やります!」みたいな。

――ご出産前は、お腹が大きなときも働かれていたんですか。

西岡 出産も順調なタイプではなくて……産まれる1カ月前から入院していたのですが、病院で最終的な確認や校正をしていました。テレビやパソコンの画面はあまり見ないようにと言われていたので、隠れながら少しずつ(笑)。

 出産に関しては、欲しいなと思っても簡単には授かれず病院にも通ったり。努力次第で結果が出るものではないので、本当に気が落ちるというか、体も心もしんどくて、そうやって一つ一つ自分が経験したしんどいことを、料理につなげたいという気持ちが大きいですね。

子どもが入院したときに救われた“一杯のスープ” 

――今年4月に発売されたご著書『手間も、材料も必要最小限。なのに驚くほどおいしい! 塩だけスープ』を拝読して、基本的な調味料が塩だけでこんなに手軽に自他を癒すスープができるのかと驚きました。

西岡 “塩だけスープ”を最初にInstagramにのせたとき、子どもが体調を崩して入院していたんですよ。私自身も毎日心配して、料理をつくる気にならなくて、仕事も忙しくて、頭のなかがめちゃくちゃなときに、以前なんとなくつくっていたスープをつくって飲んだら、すごく沁みたんです。

「塩だけで味付けをしたスープ作りのきっかけとなったスープ。シンプルな調味料で作る料理はいろいろ考えたり、準備をしたりしなくて良いのでとてもかんたん。さらにストレートに食材の旨みを感じられるから美味しい。そんな私の思いをしっかり表現しているスープだと思っています」(本人提供)

 あっ、こういう状態のときに、このスープがすごくいいなと気づいて、誰にでもつらいときはあるから、そういうときに飲んで欲しい、届けたいと思って、不思議なくらい必死に動画をつくって、Instagramにあげたんですよ。

――しんどいときは、しんどいですもんね。

西岡 しんどいときは、私もコンビニのおにぎりに頼ることもあります。手軽だし、どこでも食べられてありがたい。そう思う反面、しんどいときこそ、手づくりで温かいものを体に入れてあげるほうが絶対いいという気持ちもあって。自分に余裕がないときほど手づくりを求めてしまう、そこが矛盾しちゃうんですよね。

 でもつくる気持ちになれないときって、誰にでもあると思うんです。そういうときでも、これくらいだったらつくれる簡単さは、すごく大事だと考えていて。