度重なる性暴力のすえ「引きこもり」に
伊藤が受けた性虐待は口淫ばかりではない。覚さんの家族が不在だったある日、伊藤は彼の家に呼ばれる。そこには覚さんの同級生もおり、2人からアダルト雑誌を読まされた。まもなく覚さんが伊藤の服を脱がせ陰部を触ってきた。が、一向に勃起しない性器に「おまえ、勃たないのかよ」とバカにし、だったら自分の足の指を舐めろと命じる。
嫌だと断ったところ、頭を叩かれ、弟たちがどうなってもいいのかと脅す覚さん。屈辱感を覚えながらも命令に従うと、次に覚さんは下半身だけ裸の状態で四つん這いの体勢を取り、自分の尻の穴を舐めろと要求してきた。「これで最後にしてやる。おまえがやれば終わる」と言われ、指示に従う伊藤。こうした性暴行は約1年間続き、伊藤が小学校5年のときに終わるが、彼はこの経験により、家に引きこもるようになる。
自分のされたことが何を意味していたのか理解できないながらも、二度と味わいたくない辱め。自分も含め人の身体を見ること自体に嫌悪感を覚え、父親と一緒に風呂に入るのも拒んだ。もちろん、両親には何も打ち明けられない。本当のことを話せば、また覚さんから暴行を受けるものと信じて疑わなかった。
伊藤が、自分の受けた行為が単なるいたずらではなく、性暴力だと明確に認識するのは中学校に入学し、クラスメイトの男子が交わす会話を聞いてからだ。改めて大きなショックを受けた彼は周囲にその事実がバレないよう、なるべく同級生たちとの接触を避けたばかりか、笑い声が聞こえると皆が自分のことを噂しているのではないかと被害妄想を抱くようになる。
その後もトラウマを克服できず、次第に胸が締め付けられる、体が異常に熱くなるなどの症状を示し始める。いわゆるPTSD(心的外傷後ストレス障害)だが、彼は壁に拳を打ちつけるなどの行動で苛立ちをぶつけた。こうした体の変調は高校生になっても改善されず、そのうち全ての原因は覚さんから受けた性暴力にあると確信。強い恨みを芽生えさせる。
あいつは何も変わっていない
高校卒業後、上京しコンピュータ関連の専門学校に進学。相変わらず体の変調は続いたことで、覚さんへの憎悪をエスカレートさせ、本気で殺害を考えるようになった。
20歳のとき、ミリタリーショップで刃渡り約45センチの模造刀を購入し、毎日磨き続けたことで刀は日本刀のような鋭さを持つ。
そんなある日、伊藤の殺意を決定づける出来事が起きた。2001年5月、覚さんが少女への強制わいせつで逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受けたことを家族から聞かされたのだ。あいつは何も変わっていない。殺意が確信に変わった。
