トヨタの遥か先を行く中国勢
複数の部品で構成されていたパーツを一体成型するには巨大な金型が必要になる。だが金型が大きくなるほど、金型を締め付ける圧力を強くしなければならない。逆に言えば、圧力が大きくなるほど、より大きな部品を製造することができる。テスラが導入した初期は圧力4500トン程度だったが、LKはすでに1万6000トン級を商品化し、2万トン級の開発も進めている。
当然ながらトヨタも「ギガキャスト」の導入を急いでおり、その技術を2023年に公開したが、日本メーカーが造った6000トン級のものだった。車体のリアセクション(後部)で「86部品を1部品に減らすことができる」と報じられたが、LKとは比較にならない。
トヨタは、上海で2027年から稼働させる予定のレクサス(EV)用工場において、「テスラより7年ほど遅れたが、LKとは別の中国製の9000トン級のギガキャストを導入する」との情報が、業界筋では出回っている。
かつてテスラは車体のリアセクションを2分割して鋳造していたが、今ではフロント部もリア部もそれぞれ一体鋳造している。バッテリーを載せるトレー部も車体と一体鋳造しており、テスラは一歩先んじて9000トン級の鋳造機を導入していると見られる。
ギガキャストは中国のEVメーカーたちも導入を急いでおり、BYDはもちろん、小鵬汽車も導入済みだ。深圳市内にあるLKのショールームには9000トン級マシンで造ったことを示す車体の一部が展示されていたが、ファーウェイ向けのようだった。当然ながら、BYDや小鵬汽車向けの鋳造機を生産しているのもLKだ。
筆者が小鵬汽車本社を訪れた際に、ギガキャストで一体成型された車体が展示されていた。同社の胡逸寧副総裁によると、「1万2000トンの圧力で押し出したもので、この技術により170の部品が1つになった」という。日本勢はトヨタでさえ中国勢の後塵を拝していると言わざるをえない。
本記事の全文(約5000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(井上久男「『ものづくり』で日本は完全に凌駕された…今度は我々が中国の力を利用する番だ」中国EV業界の最前線を往く 第3回)。
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