試練のようなアフレコ現場

――『銀英伝』の収録はかぎられた時間帯で行われ、収録の順番もバラバラのことが多かったそうですね。

明田川:『銀英伝』では5日ぐらいに分けて細かく収録を行っていました。皆さんお忙しい方ばかりでしたから、みんな一緒に集まってのアフレコができなくて。僕ら音響サイドは1週間のうち5日ぐらいそれでとられましたが、キャストの方は待ち時間もそれほどなく各シーンに合わせて来てもらっていたはずです。

佐々木:私は帝国軍側の方とは出る場面が違いますから、あまりお会いする機会がありませんでした。同盟軍の方々とはだいたい一緒で、特に富山さんとはほぼ毎回ご一緒させていただきました。

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明田川:『銀河英雄伝説』のとき、佐々木さんには台本を前渡ししていなかったんですよ。アフレコ当日に来て、そこで初めて台本を渡していました。『銀英伝』には独特な言葉や用語があって、他の方はセリフの用語が難しいから事前にもらいたいと言うので渡していたのですが、佐々木さんは当日パッと見て、事前の準備なしに芝居をしているのはすごいなと思っていました。

佐々木:え、他の方には前渡しされていたんですか?

明田川:そうだよ(笑)。

佐々木:ガーン、前渡しがOKだとは知らなかった……。普通に全員が当日いただくものだと思っていましたよ……。一人だけ試練じゃないですか(笑)。あれはプレッシャーでしたよ。当日台本をいただいて、「あ、こんなにしゃべっている。しかも言葉が難しい」とか思って。

明田川:いやあ、あれはすごいと思った。

佐々木:ありがとうございます。いやあ、そうだったんだ。明田川さんがおっしゃるように『銀英伝』には難しい言葉や独特なセリフまわしが多かったんですよね。哲学的、思想的なセリフもよくありましたし。

原作は小説家・田中芳樹氏の小説(画像:Amazonより)

明田川:収録でどうしても間違えてしまう人もいるなか、佐々木さんはそれをNGなしで見事にやっていましたよ。

佐々木:自分が間違えたらそのシーンの相手役の方も録り直しになってしまうかもしれない、自分のせいで先輩方を付き合わせてしまうなんて絶対にできないと思って、ものすごく集中していました。

次の記事に続く 「悲しいとかショックだとかという感情以前に…」銀河英雄伝説ユリアン・ミンツ役=佐々木望が明かす『レジェンド声優・富山敬の死去』の驚き【明田川進×佐々木望】