『宇宙戦艦ヤマト』の古代進役や『銀河英雄伝説』のヤン・ウェンリー役――昭和から平成にかけて、多くの人気キャラクターの声優を務めた富山敬氏(1938~1995)。

 富山氏と一緒に働いてきたレジェンド音響監督、ベテラン声優の2人が語るその思い出とは? 音響監督歴58年、新書『音響監督の仕事』(星海社)より著者の明田川進氏と佐々木望氏の対談パートを一部抜粋してお届けする。なお、本対談では『銀河英雄伝説』終盤の展開に触れているので、ご注意ください。(全2回の2回目/最初から読む)

富山敬氏が演じたヤン・ウェンリー(画像:Amazonより)

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芝居でたくさん会話をした富山敬さん

――ヤンとユリアンとして長くご一緒されてきた富山敬さんとの思い出をお聞かせください。

佐々木:富山さんとは『銀英伝』の前に、私がデビューした直後のあるアニメーションでご一緒したことがありましたが、そのときはお話しする機会がほとんどなかったんですよね。その後、『銀英伝』でご一緒してからも、ゆっくりお話しさせていただいたことって、実はほとんどないんです。

 挨拶をしてスタジオに入ったらすぐ収録で、待ち時間が多少あったとしても、ブースの中では先輩方も私も私語はほとんどしませんでした。富山さんは静かに台本をご覧になっていて、私も私で台本を読んでいて、その静かな時間がとても好きでした。スタジオの中で少し時間が空いたとき、その時間に演技者は何をするのかを、富山さんからは言葉でなくお姿で教えていただきました。

明田川:芝居での会話だね。

佐々木:はい、お芝居でたっくさんお話しさせていただきました。富山さんはずっとヤンでいてくださった。だから自分はユリアンのまま、ユリアンとして幸せにいられたのかなと思います。