ゴロとフライでのヒット割合と長打割合を日米で比較した結果…

 ではここで、日本のプロ野球とメジャーで、ゴロとフライでのヒット割合と長打割合を比べてみましょう。それぞれ3年間の数値を調べてみました。

ゴロとフライでのヒット割合と長打割合(『プロ視点の野球観戦術 戦略、攻撃、守備の新常識』より抜粋)

 3年間のトータルを項目別に平均すると、メジャーはゴロ安打が24.4%、ゴロ長打が2.2%。フライ安打が20.7%で、フライ長打が16.8%。

 日本はゴロ安打が23.1%、ゴロ長打が1.2%で、フライ安打は29.3%、フライ長打が15.6%でした。

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 同じ項目で日米の比較をすると思ったほどの差はありません。しかし、日米ともに長打の割合はゴロよりフライが圧倒しています。

 意外だったのは、日本はゴロ安打よりフライ安打の割合が高く、メジャーは逆にゴロ安打よりフライ安打の割合が低いことです。これは私の推測ですが、メジャーはフライを打ちにいった結果の打ちミスがゴロで、日本はゴロを打ちにいった結果の打ちミスがフライになっているということでしょう。

 メジャーはフライを打ちにいった結果のゴロが強烈で、ゴロの長打割合が日本より1%も高くなっているのは、それが要因だと思います。

 そして日本はゴロを打ちにいった結果のフライがポップフライで、ポテンヒットの割合が高いのでしょう。

 日本はフライ安打割合(29.3%)がゴロ安打割合(23.1%)より高いのに、メジャーのゴロ安打割合(24.4%)より低いフライ長打割合(16.8%)と比べても、割合が低く逆転現象が起きています。

 私の推測で間違っていないという根拠になると思います。

日米のスイング理論の違い

 技術的な観点から見ても、納得できる根拠があります。メジャーはアッパー気味に下からバットを出していきます。そうやって打つと、バットのヘッドが早く立っていきやすくなります。このようなスイング軌道を「煽り打ち」と呼びます。

「煽り打ち」のスイングだと、ボールの上っ面を叩きやすく、打球はドライブがかかります。本来はアッパー軌道でもボールの下にバットのヘッドが入っていかなければならないので、ミスショットに分類されますが、こうして打ったゴロの打球になると球足が速く、ゴロでもヒットになりやすい面があります。

 一方、日本の多くの指導者が教える「上から叩け」は、ボールの下にバットのヘッドが入り過ぎると、擦ったような当たりになり、力のないポップフライになります。日本はポテンヒットが多くなります。

 こうして日米の打球を比較しただけでも、それぞれのスイング理論の違いが、数値になって表れてきます。私自身にとっても、とても興味深く、勉強になりました。

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