店名の「センター」という言葉に込めた想い

 調理の時間が空いたので、店長の林さんと正木さんと話をすることができた。まず一番聞きたかったことだが、なぜ店名に「センター」という言葉を入れたのかを尋ねてみた。すると、なるほどという回答が返ってきた。 

「自分たちは、前職は介護関係の仕事だったんです。介護ステーションは〇〇センターっていう名前が多いですよね。皆が集まってワイワイしたりする、そういう場所にしたかったんです。長い店名になっちゃいましたが、それでセンターを入れたわけです」と林さんは淡々と話してくれた。

店長の林豊さん

「お客さんで介護職の方がよく来てくれるようになって、お互いにコシに気を付けて頑張りましょうねなんて話をすることもありますよ」と正木さんも教えてくれた。

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 店の前にベンチや駐輪場があるのも「お客さんに集まって、のんびりしてほしい」という思いがあるのだろう。季節がよければベンチで食べる人もいるという。

この店にしかできない立ち食いそばの味を

 2人は味の提案についてもすごく謙虚に対峙している。「自分は立ち食いそばが好きで、前の仕事の合間にいつも食べていたんですが、自分が提供できる味をどうすべきか自問自答して、立ち食いそば屋にしかできない味を提供していこうと考えています。お客さんが短時間でちゃちゃっと食べて楽しめる要素を大切にしたい」と林さんは続ける。

 一方、正木さんは謙虚に「自分は出汁の不思議さにハマっていて、同じように作っても同じ味が出せないこともあり、そうした ブレがでないように、お客さんに満足してもらえるように試行錯誤しているところです」という。

正木純子さんは出汁作りと格闘中だ

 二人に別れを告げて店を後にした。清瀬駅へ歩きながらこの店にお客さんを引き付ける何があるのか考えた。

「まるす そば・うどん立ち食いセンター」はけやき通りの中央あたりにある小さな店だった。そこにはそば・うどんを通して大切なお客さんに集まってもらえるような味を提供したいという想いや工夫がこめられていた。

「自転車で清瀬市役所に行った帰りにちょっと小腹が空いたから寄ってみようかな」

「街のそば屋にない味だからなんか気に入っている」

「居心地がいいから私たち女性でも通いたくなる」

「小盛りもあってちょうどいい」

「店がDIYぽいし、外のベンチで休憩できていいね」

 こんなお客さんの声が聞こえてきそうな店だった。

お客さんが集い憩う場所になっている

 たった一杯の立ち食いそばを食べに行くだけなのに、なんだかワクワクする良い店だ。次は「辛マーボーそば」を注文しよう。 

INFORMATION

「まるす そば・うどん立ち食いセンター」 
住所 東京都清瀬市中里3-894 (駐車場5台分有)
営業時間 5:00~14:30 
定休日 木曜、日曜(祝日不定休) 
公式SNS

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