監督自身の実体験から着想して映画化
物語はユー監督と妻の体験に基づいている。CMディレクターのボーエンは、12歳年上の女性芸能マネージャーであるラーフーと交際している。年齢差とお互いのキャリアゆえ、今後の関係を曖昧にしていた2人だったが、ラーフーが45歳を迎え、北京支社への赴任が決まった日、ひょんなことから妊娠が発覚し……。
「神様は誰の人生にも『意外』な出来事をもたらします。それは人生を変えるきっかけになるものです」とユー監督はいう。「自分の経験を映画にする究極の目的は、そんな『意外』な出来事に立ち向かう勇気と、前向きなメッセージを伝えることでした」
とことんパーソナルな映画だ。この映画で描かれるのは、ユー監督≒ボーエンの視点から見た“息子が生まれるまでの物語”。その息子は今年16歳になり、大学受験を控えているという。「私は息子に対して、きちんと真面目に取り組めば難題もクリアできると伝えたかった。私がこの映画を完成させたように、時間はかかっても必ず実現できるのだと」
妻と息子には、自分たち家族から着想した映画を作っていることは教えていたものの、具体的な内容までは伝えていなかった。脚本も渡していなかったため、2人は台北映画祭のワールドプレミアで初めて全貌を知ったという。
「私たち夫婦は、息子に対して『君はこんなふうに生まれたんだよ』と話したことがありませんでした。妻も出産直前から一時的に意識を失っていたので、これまで知らなかった部分があります。この映画を通じて、息子は自分が誕生した背景を、妻は病院での出来事や夫である私の気持ちを知ることができた。私たち家族にとって、本当に有意義な映画になりました」

