9月1日、開催中の大阪アジアン映画祭で『糸の輪』が上映された。上映後の舞台挨拶には、寺嶋環監督、主演の和音さん、五条おとさんが登壇。寺嶋監督は早稲田大学文学部に在籍しながら、ENBUゼミナール監督コースに学び、卒業制作として本作を撮った思いなどについて語った。

(左から)寺嶋環監督、和音さん、五条おとさん ©OAFF EXPO2025-OAFF2026

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「手を動かしながら会話してるみたいなのが、いいなと思って」

『糸の輪』は、学生生活やアルバイトなどの日々に違和感を感じている大学生・百瀬波留(和音)が主人公。波留は偶然、毛糸の玉をひろい、喫茶店で編み物をする女性・月本織(五条おと)と出会ったことから、自分自身と世界とを少しずつ編み直していくことになる――。本作は「(ENBUゼミナールの)卒業制作として始めました」と語った寺嶋監督は、編み物を題材にした理由について続けた。

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『糸の輪』

寺嶋環(以下、寺嶋) 映画を撮ること自体がほとんど初めてだったのですが、編み物をしている友だちが周りに結構いたり、喫茶店で編み物をしている女の子たちを見かけたりすることがありました。あまり喋ってはいないけれど、手を動かしながら会話しているような、すごく独特な空気感がいいなと感じていました。それを題材にして映画を撮ってみたいと思いました。

 そこでシネマプランナーズ(映画の製作支援、募集告知サイト)で募集したところ、お二人(和音・五条おと)が別々に応募してくださったんです。どちらか一人に決められなくて、ペアでオーディションをしようと思った時に、たまたまお二人が元々お友だちだったということがわかりました。それがあったからこそ、すでに関係性ができている、慣れている空気感があったので、それをうまく映画に活かせたらいいなと思い、一緒にお願いすることにしました。

寺嶋監督 ©OAFF EXPO2025-OAFF2026

和音 オーディションの時、どんな人が来るんだろうとドキドキしながら行ったら、すごく知っている顔がいて(笑)。五条さんの持つイメージが、私が考えていた役にすごくハマっていたので、その時に「運命だな」って思ったんです。まだ決まってもいないのに(笑)。なので、本当に決まって撮影することになった時は嬉しかったですし、運命的なものを感じた瞬間でした。

和音さん ©OAFF EXPO2025-OAFF2026

五条おと(以下、五条) 和音ちゃんとは一緒にお芝居をした経験はそんなに多くはなかったんですけど、彼女の感受性や感情の豊かさをすごく信じながら撮影に臨めたなと思います。