実際に現地を訪れてみると…

 実際に桃園楽天野球場に試合を見に行ってみる。台湾の球場では、日本でいう内野席の一塁側と三塁側の隣にチアガールステージがあり(球場によりさまざま。二階席にも設けられていることもある)、かぶりつきの最前列は「髪香区」。つまり、チアのシャンプーの香りが漂うプレミアシートとして珍重されている。通常、レンズの巨大な砲塔を担いだオタクの兄ちゃん(通称「炮哥」)で占められるエリアだ。

 
8月20日の楽天桃園野球場一塁側。5回裏の後のダンスタイムで踊る李昀(Nikki)と、その後の全員集合。最前列に陣取ったお兄さんたちから、大量のカメラやスマホのレンズが向けられる。 ©︎安田峰俊

 チアの多くはインスタグラムのチャンネルを持っており、ファン向けの告知チャットグループで出場日やイニングごとの登場場所を告知する。なので、熱心なファンは推しチアが登場する舞台の前の席を一塁側、三塁側、二階席……と何シートも予約して、試合終了まで追いかけ続けるのである。人気の女の子の場合、オタクの間で撮影ポジションをめぐるバトルも発生する。

 チアの登場は1~3回と7~9回。さらに5回終了時のグラウンド整備の時間にダンスパフォーマンスがある。チアは攻撃中の応援が中心だが、守備時も三振を取ったときは軽く踊る。チアが登場しない4~6回は、壇上に地元の少年野球の選手やファンのちびっこが上がって、同じ音楽で踊っている。基本的にユルい空間だ。音楽は日本のような応援団のトランペットではなく、ホーム球場側が放送で流す曲に乗って踊る。

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相手チームのバッターが三振した際のパフォーマンスをする三塁側の楽天ガールズ部隊。 ©︎安田峰俊
4~6回のちびっこタイムに壇上に上がる子どもたち。 ©︎安田峰俊

 日本の球場の場合、一塁側とライトスタンドがホームチームのファン、三塁側とレフトスタンドの一部がビジターチームのファン、というシート分けである。いっぽうで桃園楽天野球場の場合、内野席は一塁・三塁側とも全面がホーム席だ(他球場も多くはそうらしい)。

 この日もビジターチームの富邦ガーディアンズ応援団は遠くライトスタンドに陣取り、がんばって声援を送っていた。なお、ビジターの場合はチアが公式には同行しないのが普通だが、根性のあるチアは自費で応援に行くこともあるという。

個人の立場で客席で野球を見ていたら中継カメラに姿を拾われてしまい、照れる筱晴さん。ご本人のインスタグラムより。

“ゆるさ”ゆえのトラブルも?

 チアガールの素顔。筱晴さんはダンス分野出身のベテランで、性格は理知的な姉御肌。Pennyさんはモデル出身のルーキーで、性格はまじめで落ち着いた努力家だ。2人とも、もちろんSNSも活用しているのだが、どちらかと言えばおとなしい使い方である。

 なので、次回はもっと弾けた人の話を聞いてみよう。元地下アイドル。スポーツから文化系まで超多趣味。そんな、楽天ガールズの「中堅選手」である。

<取材協力>
陸筱晴 IG:@sunnie_cat0111
佩霓 Penny IG:@pei_9104

次の記事に続く 《台湾チアの現実》基本給は約5万円、健全アイドル志向から“魂を売る”女性まで? 日本大好きチアガールを通して見えたカオスな舞台裏