台湾野球を語るうえで欠かせないチアガールたち。表舞台の華やかさの裏に隠された、いま彼女たちが直面する現実とは? 中華圏の事情に詳しい筆者が、日本ではあまり知られていない台湾チア業界の実情に迫る。(全2回の2本目/最初から読む)
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8月21日に会った中堅チアガールが、楽天ガールズ所属の沈珈妤(Kaiiさん)だ。芸名の変更が台湾のヤフーでニュース記事になるほどの、人気メンバーの一人である。
「試合中に踊っているときですか? もう無心です」
地下アイドルからチアの世界へ
彼女の経歴は豊かである。まず、もともとは台湾の地下アイドル「5TEAM」のメンバー(なお、同グループからは彼女を含め5人の元メンバーの2人がチアになっている)。その後にインフルエンサーに転身して大学に通い、さらにメイドとコスプレイヤーを経験。そして2023年に楽天ガールズに加入した。
アニメを通じて日本が大好きで、すこし日本語が話せる。しばらく取材して話していて、過去のその他の経歴を聞いたところ、Adoの「私は最強」をきれいな日本語で歌ってくれた。台湾のアニメ関連イベントで、アニソンライブ活動の経験があるためだ。
「ただ、最近は前ほどコスプレはやれていないんです。わたし、キャラの個性をものすごく掘り下げてコスプレしていきたいタイプなので、準備する時間がないとできないんですよ。あと、週末は野球の試合があるので、同人イベントになかなか行けないんです」
ほか、Kaiiさんはイラストが描ける。タブレットで描いているらしい。カバンにはちいかわと『鬼滅の刃』の煉獄さんのフィギュアをつけている。いっぽうでスポーツも好きだ。
「いまハマってるのはマラソンで、今年ハーフマラソン走ってみたんですよね。21キロのタイムが1時間59分8秒です」
なお、野球は応援のみならず、自分でも「する」。台湾には全明星運動会というオールスタースポーツ番組があり、チアガールも多数参加する。Kaiiさんはこちらも張り切っている。キャラが立っている人物だ。
「チアガールは200人以上います。バスケやバレーの分野でもいますし、競争が激しい。全員が注目されるわけじゃないので、個性がないと埋もれるんですよ。なので、自分だけの“タグ”を増やす努力をしています」


