現地時間9月10日、米保守活動家チャーリー・カーク氏(31)がユタ州の大学で射殺された事件。翌日にはテイラー・ロビンソン容疑者(22)が殺害容疑で逮捕された。カーク氏とは一体どのような人物だったのか。現地の反応は? ニューヨーク在住のライター・堂本かおる氏が寄稿した。
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9月10日の午後、SNSにチャーリー・カークが狙撃された瞬間の動画が出回った。ユタ州にあるユタ・バレー大学のキャンパスで3000人を前に講演中だったカークが突如首を撃たれて流血し、崩れ落ちた。非常にショッキングな映像で、誰もが慄いた。中には見た瞬間にパニックの発作を起こした者もいた。やがてカークの死亡が伝えられると、アメリカはこれまでにも増して分断を深めた。
31歳、アメリカの右派をリードするインフルエンサー
チャーリー・カークは31歳にしてアメリカの右派/保守界をリードする論客にしてインフルエンサーだった。世代の違いからトランプ大統領が自身ではリーチできない若者たちを、カーク自ら「私が間違っているなら、それを証明しろ(Prove me wrong)」と呼んだ熱烈なディベート術によって引き込み、トランプ票の増大に貢献した。したがってトランプからの信頼も厚く、ホワイトハウスにも頻繁に出入りしていた。
カークは暗殺のわずか4日前となった9月7日(日本時間)には参政党に招かれて来日していた。基調演説に加え、神谷宗幣代表との対談も行われ、同党の公式サイトによると1万~3万円のチケットは完売だった。
CNNは日本滞在中のカークにインタビューしている。その際、CNNは参政党を「MAGA運動に触発された極右ポピュリスト政党」とし、反グローバリズムを掲げるカークは「3000万人のパキスタン人を日本に送ったら日本はもう日本ではない」と、日本の移民問題を語っている。これがカークの最後のインタビューとなった。
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22歳の男性が逮捕、薬莢には「おい、ファシスト!」と…
容疑者タイラー・ロビンソン(22)が逮捕されたのは翌9月11日の夜遅くだった。翌朝、FOXニュースにトランプ大統領自らがゲスト出演して逮捕の第一報を告げ、同時に容疑者への死刑を求めた。
ロビンソンはカークが講演していた場所から約180メートル離れたビルの屋上から狙撃し、逃亡していた。その際、星条旗とワシのイラストのTシャツを着用。狙撃に使われたと思われるライフルと共に見つかった薬莢には「おい、ファシスト!捕まえろ!」などの言葉が刻まれていた。ただし、こうしたフレーズは実際の反ファシズム・メッセージではなく、ゲーム用語だとする説が出ている。
また、容疑者と家族はカークがユタ州にやってくること、カークが「憎しみに満ち、憎しみを広めている」ことなどを話し合っていた。一家は敬虔なモルモン教徒、両親は共和党支持者。ロビンソンは無党派として登録していたが、2024年の大統領選は未投票、2020年は投票年齢に達していなかった。
保守派からは事件直後から「リベラルは暴力的」「民主党の責任」と言った声が噴出したが、容疑者の逮捕後はその政治的立ち位置が不明瞭なため、議論は宙に浮いた格好となっている。
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チャーリー・カークは1993年にイリノイ州シカゴの郊外で生まれている。両親は共和党支持者で、カークも高校時代から保守派の政治活動を開始。その時期、バラク・オバマが大統領に当選。シカゴはオバマの地元であることからクラスメートの多くは若くフレッシュな“米国初の黒人大統領”に熱狂。これが逆にカークを保守の道に進ませたとされている。



