自ら宣言して「フリークラス」に所属する棋士も
フリークラスには、自ら宣言して所属することもできます。降級した場合と比べると、フリークラス宣言した棋士は順位戦には復帰できないものの現役を長く続けられます。定年65歳、または順位戦在籍可能最短年数(現在のクラスから、降級と降級点を毎年続けた場合の順位戦に在籍できる年数)に15年を加えた年数が過ぎると引退になります。順位戦に参加できなくなってその分の対局料をもらえなくても、現役棋士を長く続けたいならば宣言したほうがよい可能性が高いです。
私は2015年3月に46歳でフリークラス入りを宣言しました。順位戦はC級1組から2組に降級し、2組でも結果を残せませんでした。私は学校での授業や講演会、将棋教室など普及の仕事を依頼されることが多く、レッスンプロとしての仕事の割合を増やすことを決断しました。宣言当時は順位戦在籍可能最短年数が1年だったので、それに15年を足した16年が私のフリークラス在籍可能年数です。2031年の引退が決まっています。
長く勝負の舞台に立ち続ける棋士たちの強さ
60歳を超えて、フリークラスに降級すると即引退が決まります。60代で順位戦に参加している棋士は数えるほどです。昭和や平成のように、70歳を超えた棋士が何人もいる状況ではなくなっています。それを思えば、2017年に77歳で現役を引退した加藤一二三九段は本当にすごいですね。1954年に14歳でデビューしてから62年10カ月、約2500局を休場・不戦敗もなく戦い抜いたのですから。棋力と健康を維持していないとできないことです。最高齢現役、最高齢勝利、最高齢対局、現役勤続年数、通算対局数のすべてで、加藤九段は史上1位の記録を保持しています。2016年に藤井聡太さんのデビュー戦となる竜王戦で戦ったときは、年齢差は62歳6カ月と歴代1位の記録になりました。また、この対局で19世紀生まれの棋士から21世紀生まれの棋士まで、3世紀にわたる棋士との対戦を実現しています。
昭和の大棋士、大山康晴十五世名人は竜王戦1組、順位戦A級に所属したまま1992年に69歳で逝去しました。癌の手術を乗り越えて、60代でもタイトルに挑戦する姿は不死鳥とも呼ばれました。1952年、大山名人は29歳で初代実力制名人の木村義雄十四世名人から名人を奪います。そして、1988年65歳のときには、当時17歳で五段の羽生善治に王将戦で勝ちました。大棋士の長い長い活躍を見ると、心身ともに鍛えが違うというのを実感します。




