日本維新の会が流行らせた「断言口調」と「太ゴシック斜体文字」

 筆者が動画を見てとくに印象に残ったのが、太ゴシック斜体の文字を画面内でスライドさせるアニメーション表現です。この表現は、日本維新の会の政治活動ポスターや動画CMで多用され、短い文言と断言口調のキャッチコピーで、力強さや勢い、切迫感を打ち出すために使われています。

 2023年の統一地方選挙の際に公開された動画「政治はいつ変わるのか。#維新はやる」は、日本維新の会の基調色である黄緑色のグラフィックと白黒の映像を組み合わせ、男性のナレーションに重ねるように文字が左から右に移動し、当時代表を務めていた馬場伸幸と共同代表の吉村洋文が「#維新はやる」というキャッチコピーとともに同じ方向に並んで歩きます【※4】。

「【日本維新の会】政治はいつ変わるのか。#維新はやる」(日本維新の会、2023年)※現在は非公開 出典:https://www.youtube.com/watch?v=yoSMg2dGhEY

 両者を見比べてみると、映像の構成や緊迫感を演出するナレーションやBGMの使い方もよく似ており、日本維新の会の「前に向かう」「停滞感を打ち破る」ことを前面に打ち出した映像表現が、自民党総裁選のキャンペーンに取り入れられたと解釈することもできます。

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 太ゴシックで斜体の文字は、2022年に当時自民党総裁だった岸田文雄が「決断と実行。暮らしを守る。」というキャッチコピーで制作した政治活動用ポスターでも用いられています。

 前任、前々任の総裁である菅義偉、安倍晋三のポスターでは斜体の文字は用いられておらず、岸田政権の時代に「勢い」「行動力」「躍進」を視覚的に印象づける表現として自民党の広報の中に定着したものといえるでしょう。

自民党の政治活動用ポスター
自民党の政治活動用ポスター
自民党の政治活動用ポスター

 このように、容姿や態度、短く言い切る文言を通して印象づけを行うイメージ戦略に長けていたのは、「おじさんの詰め合わせ」ポスターの中でも画面の右下で大きな存在感を放っている小泉純一郎です。