――いいお話ですね。
佐々木 それよりも前に、会社を辞めてから初めて増田に再会したのが、たしかTMC(東京メディアシティ)の楽屋だったんですよね。あれもうれしかったですね。
――それぞれの生きる場所で。佐々木さんが会社をお辞めになるとき、増田さんにもお伝えしたんですか。
佐々木 ちょっと電話で話して、どんな感じかというのは聞きました。
――それは辞めようと思っている段階で?
佐々木 そういうときって、人に話すことで自分のなかで整理して考えてるんでしょうね。
入社2年目で大手広告代理店を辞めた“本当の理由”
――辞めるにあたって、迷いのようなものがあったのでしょうか。
佐々木 やっぱり家業のことがあったので。会社を辞めるというよりも、家業をどうするのかということですね。
――ご両親から反対されたりしましたか。俳優の道を進むことに対して。
佐々木 俳優の道を進むというか、会社を辞めて、両親に家業を継ぐことを諦めてもらうということは、つまりそれが俳優の道ではあるんだけど……。そのときは誰も俳優の道で成功するなんて思っていないわけで、僕自身も、俳優の道を進むという大英断をしたわけじゃなくて、もうちょっと演劇を続けたいくらいの気持ちでしたね。いまはまだちょっと演劇をやめられないというくらいで、この世界で生き抜いてどうしようかっていうことではなかったんですよね。
――ひきつづき会社の仕事を続けながら、という選択肢はなかったのでしょうか。
佐々木 どうしても決断しなきゃいけないことがあって。僕の場合は、会社の仕事優先で劇団の活動を続けていて、代理店なので週末にイベントがあることも多かったんですね。たとえばプレゼンをやって勝ったら、2年前から劇場を押さえている公演に出演できなくなるかもしれない。どうすんねんっていうことが、何度かあったんですね。いつどうなってもおかしくなかったんですけど、あるとき東京の劇団から、1カ月稽古、2カ月本番という依頼があって、最初僕は辞退したんです。それを先方のプロデューサーが熱意をもって何度も声をかけてくださって、じゃあちょっと考えようかな、というところが、会社を辞めるひとつのきっかけになりました。

