「普通に働け」「両親ですらそれはおかしいと…」
――「両親に家業を継ぐことを諦めてもらった」と佐々木さんが感じたことについて、引っ掛かりのようなものはありましたか。
佐々木 あー、それはありましたね。僕が継ぐって言ったのに、放り投げてしまったことは申し訳ないと思っていました。
だからといって、俳優がだめになったから(実家に)戻るということはありえないと思っていたし、一度ここでもう、うちを継ぐということはない。それは失礼すぎると思ったので、そういう意味での引っ掛かりはなかったです。
――会社をお辞めになるとき、「普通に働けばいいのに」など言われたりしましたか?
佐々木 それが普通やと思いますよねえ。いまだにそのときの決断が正しかったかというと、わからないです。
――え、いまも?
佐々木 いまだに。
――こんなにご活躍されていても?
佐々木 いまこういうふうになっているだけで。そのときの決断は、冷静な判断ができていたかどうかといったら、違うと思う。やっぱりいま思っても、家業を継ぐことを諦めてもらってこれ(俳優業)をやるなんてことは、なにを考えてんねんと思いますね。明確な強い意志があったとも思えないですもん、僕が。やり通すんだ、なんとかやり抜くんだという意志がそのときあったかといえば、お前ないやろって(笑)。
――いまここに佐々木蔵之介さんがいらっしゃるけど、当時は……。
佐々木 それは誰にもわからないし、両親ですら、怒るというか、呆れるというか、それはおかしいと言われました。
――それで、家業は3人兄弟の末っ子である弟さんが継がれることに。
佐々木 はい、継いでくれて。いや、そのときは継ぐって言ってたかな? 「兄(蔵之介)が帰ってくるまで留守を預かる」という心持ちで、それが何年も続いているようなことを言ってくれているんですけどね。
撮影=榎本麻美/文藝春秋
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