昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

僕の『講談入門』は講談復興の一里塚

―― ところで、松之丞さんは今、どれくらいのネタを頭の中に入れているんですか?

松之丞 150くらいですね。

―― 新刊『神田松之丞 講談入門』は、そのご自身のネタの解説本になるんですか?

松之丞 そうですね。当初は4500ほどある古典講談のあらすじを全てカバーする辞典みたいなものを作ろうと思ってたんです。講談の辞典ってそもそもないんですよ。だけど、無理というか、そもそもみなさん、そんなに興味がないと気づきまして(笑)。それでまず、神田松之丞というパーソナリティに乗っかってもらおうと、僕が持ってるネタを全部網羅した本にしたんです。しかし何が大変って、校閲がもう大変。

 

―― そもそも辞典がないってことは、参照する資料があまりない。

松之丞 執筆は長井好弘さんなんですけど、その長井さんも疲れ切って間違いまくりなんですよ(笑)。目次から間違ってるの見つけて、これは俺もしっかり校閲しないとまずいなと。「万両婿」ってタイトルが「万両『婚』」になってたりとか。

―― あぁ、怖いですね。

松之丞 「入門本」って謳ってるのに、入門本が間違ってたら誰も買わなくなる。300ページを1文字1文字、時間ない中チェックしてくって地獄で。もう寝る間を惜しんでね。でも寝なければ寝ないほど朦朧としてきて、正しいところに赤でバツつけたり(笑)。

―― でも、そういう本は絶対に大事ですよね。

松之丞 講談復興の一里塚にする、という意識がありました。あれだけチェックしても、どうしても何カ所か間違いはあると思うんですけど、全力は尽くしました。

 

『情熱大陸』、「ふわっ」とした感じで迫っていただいて

―― これから出てみたい、挑戦してみたいテレビ番組はありますか。

松之丞 『情熱大陸』(笑)。野村萬斎の超劣化版みたいな感じで、どうですか。講談師って世間的にはどうなんですか、イメージ。歌舞伎役者みたいなところなんだけど、それよりは落語寄りでちょい面白いみたいな、ゆるい位置なんですかね。そういう「ふわっ」とした感じで迫っていただいて。

―― でも『情熱大陸』はホントに近い内に実現しそうですね。

松之丞 まぁ、近い将来の真打昇進前でしょうね、やるんなら(笑)。僕もどう『情熱大陸』を演じるべきか考えておかなきゃならないですね。テレビだから、ナチュラルにさらけ出すのか、それとも談志師匠みたいに無駄に強気っていう感じを出すのか。聞いちゃうと思いますね、『情熱大陸』のスタッフに。「どういうキャラでいけばいいですか」って。

―― キャラの相談(笑)。

松之丞 『情熱大陸』ですからね、その場面も流されるかもしれないですけど。まぁまぁ、いいんじゃないですか、それで。

 

#1 衝撃の講談師・神田松之丞が語る「“あの番組”で笑いを取りに行かなかった理由」
http://bunshun.jp/articles/-/8223

#2 “講談界の超新星”神田松之丞が語った「芸人が終わるとき」
http://bunshun.jp/articles/-/8224

写真=鈴木七絵/文藝春秋

かんだ・まつのじょう/1983年生まれ、東京都豊島区出身。日本講談協会、落語芸術協会所属。2007年、三代目神田松鯉に入門。2012年、二ツ目昇進。2015年、「読売杯争奪 激突! 二ツ目バトル」優勝。趣味は落語を聴くこと。著書に『絶滅危惧職、講談師を生きる』(聞き手・杉江松恋)、新刊に『神田松之丞 講談入門』