アニメやゲーム、外国映画の吹き替えなどで活躍する「声優」。今や子供たちにとって、なりたい職業ランキングの上位に位置する憧れの存在だ。そんな職業の第一線で活躍する著者が、仕事にかける思いを綴った本が、若い世代を中心に好調な売れ行きを見せている。
「編集する上では、いわゆる“タレントさん本”的にならないように意識しました。仕事の良いところ、華やかなところだけではなく、うまくいかなかったこと、他人を羨んだ経験なども率直に書いていただきたかったんです」(担当編集者の野田実希子さん)
思春期に進路を巡って、父親とぶつかったこと。声優になったものの、思うように役に就けなかった日々のこと。飾らない、熱い語り口で披露されるエピソードが深い共感を誘う。
「著者は今、32歳。ベテランと呼ぶにはお若いですが、駆け出しではなく、読者にとって『お兄さん』のような位置付けかと思います。先生や親といった身近な大人の言葉だと斜に構えてしまう子でも、そうした方からのメッセージは素直に受け止められるのではないでしょうか」(野田さん)
刊行翌日には即重版決定。2カ月が経った現在も続々と版を重ねている。読者からの感想には「初めて自分で本を買った」「本をちゃんと読み通せて嬉しかった」といった内容も多い。声優という職業だけでなく、活字の世界への入り口にもなっているようだ。
2018年5月発売。初版1万2000部。現在10刷6万部