予約待ちの客に「極みコロッケ」を発送する方法は、とてもシンプルだった。
注文客には、発送の1週間前にメールを送る。反応が返ってこない場合は、携帯電話の番号に今度はショートメール。それでも連絡がなければ直接電話をするそうだ。2人の発送担当のスタッフが行っているという。
ちなみに極みコロッケは通販だけの販売だが、牛肉とじゃがいものグレードを変えた2015年発売の「神戸ビーフプレミアムコロッケ」は店頭や催事場ならその場で揚げてもらい、すぐに食べることも可能だ。
牛肉の価格高騰、手作りを続ける難しさに直面
2023年3月には配達が多い神戸に2店舗目を構えた。24年4月に神戸市中央区に移転し、10席のイートインスペースもつくった。コロッケだけでなく、「すじ玉どん」や「神戸ビーフカレー」などが注文できるように、新しい精肉店のかたちを模索している。ランチの仕込みの様子をYouTubeで配信するなど、ファンの獲得にも余念がない。
だが、新田さんを取り巻く環境は、決して明るくはない。理由は牛肉の価格高騰だ。
「東京オリンピック以降、ぐんぐん上がって。前はうちで神戸牛のサーロインステーキを100g2000円で売っとった。今は5000円です。牛肉の海外輸出が多くなって、頭数が足りなくなったんです。牛は人間と一緒で、一度の出産で1頭しか生みません。それに牛飼いも跡継ぎがいないなか、休みなしでしょう。従業員増やして交代で休みというが、今若い子が入ってこうへん。結局、家族経営になって、なかなか頭数が増やせないんです」
今年から最低賃金が上がり、売り上げは右肩上がりだが、利益は年々減っているという。社員とアルバイトを20人に減らし、機械に任せず、いままでやってきた。しかし、人件費をかけてコロッケを一つ一つ丁寧に手作りすることが現実的に難しくなっているという。
「もうやめようとかなと」とは言うものの…
いままで通りの商売が通用しなくなっている。新田さんはインタビューで「ある程度採算取れるようになったら、もう(極みコロッケを)やめようかなと思うてます」と率直な苦悩をのぞかせた。それでも心折れずに店を続けているのはなぜか。