新田さんは「そんなんで売れんのかいな」と半信半疑な思いを抱いたが、物は試しとホームページ作りを頼むことにした。完成から3カ月後、Yahoo!検索で上位に表示されるようになり、新田さんは驚いた。そこから、北陸や種子島などの離島からの注文が、ぽつりぽつりと入るようになった。1999年の秋、こうしてオンライン通販がはじまった。
通販の可能性を感じた新田さんはさらに力を入れる。だが、注文客はほとんどが個人客。パソコンはブラウン管モニターの時代である。あるかないかもわからない店に、客が100g3000円以上する高級肉を注文するのかと思い悩んだ。
そこで一つのアイデアが浮かぶ。
「お試しで神戸牛を楽しめて、お店のコンセプトを詰めた商品を作ろう」。この“お試し”戦略が、「極みコロッケ」の生まれるきっかけとなった。この時はまだ、自分の作ったコロッケを何十年も待つ人が日本各地で増えることになろうとは夢にも思わなかった。
徹底した地元産の食材へのこだわり
極みコロッケには、新田さんの職人気質なこだわりが詰まっている。
コロッケに使う牛肩ロースはサイコロ状にカットして贅沢に入れる。揚げた時に出る肉の旨みと柔らかい食感がジャガイモに染み込む相乗効果を狙っているという。
次はジャガイモ。神戸牛は旨味が強いのが特徴だ。それに負けない味や食感のあるジャガイモが不可欠だった。
「うちの店のコンセプトは初代の頃から変わらず、『顔の知らん人が作ったものは売りません』、『地元の物しか売りません』だったので。市場でジャガイモ仕入れて……という作り方じゃなくて、チームで作ろうと思ったんです」
新田さんが選んだのは甘味の強い「レッドアンデス」だった。しかし、この品種は北海道でしか作っておらず、コロッケを年中売ろうと思ったら二期作をしている農家から取り寄せねばならなかった。
地元の食材で作ることにこだわる新田さんは、車で1時間ほど離れた西脇市で牧場を営む知り合いに、ジャガイモの栽培を頼み込む。