101歳を迎えた作家の佐藤愛子さん。現在は介護施設に入られていますが、愛子節は健在です。『九十歳。何がめでたい』はシリーズ累計187万部を突破。そんな大ベストセラー作家、愛子さんの“お金遍歴”はどのようなものなのか。娘の響子さん、孫の桃子さんにうかがいました。
『週刊文春WOMAN 2025秋号』より、一部を抜粋の上ご紹介します。
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今回のテーマを「お金」にすることは、前回「『恋』と『愛』」の話を伺いながら、ほとんど決めていた。佐藤さんが恋人と2人きりになりたくて、中学生だった娘の響子さんをパリに送り出したのだが、その時の航空券が直行便でなかった――そう聞いたからだ。自分の都合(恋愛)で送り出すのだ、負担の軽い直行便が普通では? そう尋ねると、響子さんとその娘・桃子さん、口を揃えてこう言った。「ケチですもん」。え、そうなのですか? というわけで、まずはその話の続きです。
響子 南回りで行きました。正月休みですから長袖ニットを着ていたけど、気温30度超えのインドに着くんです。そんな調子であちこちで降りているうちに、体がおかしくなりました。でも中学生だし、いつも母のわがままに振り回されているから、そういうものだと思ってましたね。
桃子 とにかくケチですから。
響子 暮らしに余裕がなかったのもあったかもしれない。父が借金を作ったのが私が小学2年の時で、母が返しまくって、余裕ができたのが北海道に別荘を建てた時だとすれば、私が高校1年の時だから。
桃子 でもあの人のケチは、余裕のあるなしとは関係ないよね。
響子 ここは2世帯住宅ですから、スーパーに行けば母の買い物もします。帰って品物を渡した時に少しお金を多めにくれるなんてことは、20回に1回あるかないか(笑)。消費税分まできっちり精算します。
ここで“佐藤さんとお金の基礎知識”を。響子さんの父(佐藤さんの夫)で作家の田畑麦彦氏が会社を倒産させ、膨大な借金を作ったのは1967年、佐藤さんが43歳の時。債権者から逃れるために偽装離婚したはずが、田畑氏はすぐに再婚。姿を消した田畑氏に代わり、佐藤さんが借金を返す生活に。この顚末を書いた『戦いすんで日が暮れて』で69年に直木賞を受賞、人気作家に。原稿料が入っても借金返済で消えていくからと預金通帳も見なかったが、気づいたら1000万円。「使ってしまいたくなって」北海道・浦河町に別荘を建てたというのも、“基礎知識”の一つ。

