欲しいものを我慢するっていうことが美徳だと思っている
響子 父の会社の倒産前、私が小さかった頃も、おもちゃを買ってくれなかったんです。
桃子 世代的に、「贅沢は敵だ」が染み付いているんだと思うんです。余計な出費はしないのが基本で。
響子 だから私は、おもちゃコンプレックスがものすごく強くて。
桃子 その反動が今、すごいよね。おもちゃにもいろんなジャンルがあるけど、全ジャンルが好きでしょ?
響子 可愛いと思うものは、全部集める。
桃子 ガチャガチャ、昨日も秋葉原でたくさん回してたよね。
響子 母が知ったら、「何、こんなもの」「あんたは全く」って、絶対怒られるだろうなと思います。
桃子 欲しいものを我慢するっていうことが美徳だと思っている。
響子 いや、そもそもおもちゃというものが役に立たないと思っているんだよ。
桃子 「我慢は美徳」にプラスされて「おもちゃは役に立たない」っていうのがあって、「買ってあげない」になるんじゃない?
「あんまり食べたくて寿司の夢ばかり見てる」って母に言ったら笑ってた。
響子 我慢で言うなら、お寿司ですよ。大学の時、どうしてもお寿司が食べたくなって「安いのでいいから食べたい」と言ったけど「ダメ」。その後、3日続けてお寿司の夢、見ましたよ。「あんまり食べたくて寿司の夢ばかり見てる」って母に言ったら笑ってた。笑ってたけどダメなんだよね。
桃子 我慢のさせどころを見つけたら、ここぞとばかり我慢させるみたいな印象がありますね。
響子 お金というものへの躾という意識もあったと思いますが、忘れもしません。
お金の話で佐藤さんが必ずするのが、父(作家の佐藤紅緑)のこと。〈小さい頃に、「あ、儲かっちゃった」と言うと、その一言だけで、「儲かったなんて言うもんじゃない。それは卑しい人間の言うことだ」と、ひどく叱られました。(中略)要するにお金に執着することは、人間として恥しいことだと。武士の血を引く明治の男ですから、そういう考えだったんです〉(『それでもこの世は悪くなかった』)
桃子 めっちゃ執着してます、祖母はお金に。
響子 だけど、本人にそう言ったら、「執着してない」と言うと思うよ。
桃子 自分は紅緑であるというつもりなんだけど、根っこは(佐藤さんの母で元女優の)シナさんなんですよ。

