DNAに組み込まれた「シナのケチ根性」から来る、ある種の思いやり
響子 シナさんって人は本当にドケチでした。よく覚えてるのは、お正月に獅子舞が来て玄関先で舞ったんです。最後に心付けを差し上げる時、私に5円玉を握らせて、渡して来いって言ったんです。小学校低学年だったけど、恥ずかしいと思いましたよ(笑)。
桃子 渡したの?
響子 あんまりだって言ったの。そしたら「50円玉と間違えたわ」って。でも、絶対、間違えてない。
桃子 50円にしても……。
響子 父の会社がもうどうにもならないって時に、母はシナさんにお金を貸してほしいと言ったそうです。「いいけど、利息は銀行と同じにもらう」と言われたと、母から聞きました。シナさんのケチさ加減が身に染みていて、だから余計に尊敬する紅緑のようにありたいと思うんじゃないですか。
桃子 我々にお金で困ってほしくないと、すごく思っているらしいんです。DNAに組み込まれた「シナのケチ根性」から来る、ある種の思いやりなのだと思います。
響子 「お金はあるの?」「商売はうまくいってるの?」と、施設に入っている今でも言いますから。
桃子 なぜか響子がすごく借金をしたという夢を見たらしくて、現実とごっちゃになったりして。
響子 借金へのトラウマがあるのかもね。
桃子 お金はとにかく貯めておく。それが根底にあるのだけれど、お金が好きでしょっちゅう数えているといった感じは全然ないんです。いざ財布を開くと、ケチが発動する。そんな感じだと思います。
この10年ほど佐藤さんは「老後とお金」について意見を求められることが増えた。「婦人公論」(12年5月7日号「年金不安を一喝!」)では、戦争体験から、国に頼らず〈どんな事態になっても、自分一人の力で生きて行くという覚悟みたいなものが、いつかできたような気がする〉と語り、「老後資金2000万円」問題には〈私がもっと若くても、そんなこと気にしてませんね。若いうちから先のことを考えて生きるなんて、つまらない人生です〉(同20年1月28日号)と答えた。
