響子 母の「理想」を語ったんだと思います。
桃子 コロナの時、いろいろな会社が廃業しましたよね。そのこと、祖母は突き放す感じで話していました。会社というのは、もしもの時のためにお金を貯めておくものなのに、それをしないからそうなるって。
響子 備えるという意識は強かったですね。
桃子 2000万円問題の時に、「5000万円ぽっちしか持っていない」って言ってたよね。「私の生活を維持するには、5000万円じゃ足りない」って。一体、何歳まで生きる計算なんだろうと思いましたけど(笑)。
響子 バブルの時は株を買って、100万、200万という感じで損してました。「日常の10円、20円はリアリティーがあるからケチるんだ。100万、200万はリアリティーがない」って自分で言ってました。
桃子 証券会社にしたらいいカモだ(笑)。
響子 そしてあの方はですね、マンションも4部屋買って、貸してました。バブル期でしたが、親しい編集者さんに「買い過ぎです」って言われてました。でも食卓には相変わらずひじきの煮ものとかが並ぶわけで、私にはそれこそバブルのリアリティーがなかった。
桃子 どこかにおいしいものを食べに行こうとかは、ないのね。
響子 ない。寿司がダメなんだから(笑)。バブルが崩壊して家賃を滞納する人が出て、私の夫に「ちょっとどんな部屋か見てきて」って言ってました。見ないで買ってたから。
桃子 え? 自分が住むわけじゃないから見ないってこと?
響子 見に行くのはめんどくさい。でも買う。大胆ですよね。そういう人なんです。
※他にも、愛子さんの根本にある「清貧」という考え方、印税が年間1位になったときの反応、浦河町の別荘での思い出など……記事全文は『週刊文春WOMAN 2025秋号』で読むことができます。
娘・杉山響子
すぎやまきょうこ/1960年生まれ。玉川大学文学部卒。両親の離婚後は、母の佐藤愛子と暮らす。
孫・杉山桃子
すぎやまももこ/1991年生まれ。立教大学文学部卒。現在は「青乎(あを)」として、映像や音楽作家として活動。
さとうあいこ/1923年大阪府生まれ。甲南高等女学校卒業。1969年『戦いすんで日が暮れて』で第61回直木賞受賞、2000年、65歳から執筆を始めた佐藤家3代を描く『血脈』の完成により第48回菊池寛賞受賞。2017年旭日小綬章を受章。
写真:文藝春秋、佐藤亘
