生まれつき両腕がなく、短い両足と計4本の指という“四肢欠損”で生まれた佐野有美さん(35)。2020年には第一子を出産し、足の指や口を使って家事育児などを器用にこなしながら、“四肢欠損ママ”として障害とともに生きるリアルを発信している。

“四肢欠損ママ”として情報発信を続けている佐野さん(写真提供=本人、以下同)

周囲への感謝を欠かさない佐野さん

 佐野さんは自身の「先天性四肢欠損症」という障害について、「よく『乙武(洋匡)さんと同じ障害ですか』と聞かれるんですけど、厳密にいうとちょっと違うんです」と話す。

「乙武さんは途中まで腕があって、成長期には骨が伸びる痛みを感じたそうなんですけど、私の場合、両肩から先が全くなくて。で、下半身は、短い左足に指が3本あるのと、左足よりさらに短い右足に指が1本ある、という状態です」

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 小学校に入学する際は、教育委員会から受け入れ拒否されたこともあった。しかし、両親が根気強く説明して、入学できた。

「その小学校は、当時通っていた保育園から遠かったんです。そこで、小学校の近くの保育園に体験入園して、あらかじめ友だちを作ったうえで入学できるようにも両親が気を利かせてくれました。事前に環境を整えてくれたこともあり、小学校は本当に楽しく通うことができたんです」

両親を含む家族たちとのワンショット

 2017年に結婚したパートナーは、昔からの知り合いかと思うほど、自然体でいられる点に魅力を感じたという。家事育児はもちろん、佐野さん自身の介助もスムーズにこなしてくれている。

「旦那は本当に普通というか、自然体でいられるなと。私が足で食事をすると、普通は驚くじゃないですか。『足でできるんだ。すごいね』とかって言う人もいたんですけど、それさえなかったんですよ」

差別や偏見をなくすには、発信が欠かせない

 佐野さんは、近年、障害者への社会の見方が確実に変化していることを実感しているという。

「娘が通っている保育園でも、保護者の私に対する反応が、自分が小さかった時と比較して全然違うんですよね。もちろん、子どもたちも変わってきたなと感じます」

2017年に結婚、2020年に第一子を出産した

 SNSでの心ない言葉に傷つくこともあるが、「自分には何ができて、どんな助けが必要か、こちらから発信しなければわからない」と、自らの生活を発信していくことに前向きだ。

「『差別や偏見をなくそう』と言うなら、自ら発信していくことからはじめませんか? って思ってるんです」

 佐野さんの言葉には、家族の愛に包まれて育った経験から生まれた、誰もが共に支え合える社会への深い願いが込められている。

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 佐野さんのインタビュー全文は、下記からお読みいただけます。

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