負のループにハマり、治療費で借金も1000万円に
――そのめまい症状は、どれくらい続いたのですか?
冬休み 4~5年くらいかな。結婚式場で働き始めたのが23とか24歳だから、29歳くらいまでまともな生活ができなかった。その間、ありとあらゆる病院だったり療法だったりを試した。お遍路さんみたいに、次はこれを、その次はあれをやってみようって巡り続ける。内科、精神科、歯科、すべて行ってみたけど、原因不明。頭の痛みもあったのですが、歯の噛み合わせが原因かもしれないということで、悪くもない歯を抜かれたこともありました。結局、その症状を緩和してくれるのは精神安定剤だから、服用するしかない。その負のループにずっと29歳まではまっちゃってた。
――中には保険の利かない治療もあったと思います。相当な費用がかかったのでは?
冬休み いろいろ怪しいのにも行った。例えば、背中に十文字を書くっていう治療があってね。背中に、「えぃ!」って十文字をなぞるだけ。治るわけねぇって(笑)。それで5万円だよ。10分5万円。十文字じゃ治んないって分かっているんだけどワラにもすがる思い。めまいで電車移動はできないから、移動もすべてタクシー。とにかくお金がかかるから、1000万円くらいまで借金も膨らみました。お母さんからもお金を借りて、本当に迷惑をかけちゃった。
もちろん、保険適用のきちんとした治療も受けていたけど、星状神経節ブロックという注射で、めまいを緩和させるだけ。喉の真ん中に注射するんだけど、本当に奥までふーって入ってくるんですよ。怖いから、まともに見れない。だから、私は『千と千尋の神隠し』のDVDを、病院でずっと流してもらっていました。『千と千尋の神隠し』のものまねは、私の持ちネタの一つなんですけど、そのときにずっと見ていたからセリフが全部言えるようになっちゃって。
――星状神経節ブロックを打つ以外に、まともな方法もなく?
冬休み それくらいしかないから、結局、52本も打っちゃったの。その副作用で、どんどん身体がむくんでいった。ある日、診察室の前で、102本打ったって人がいたの。その人は顔も身体もパンパンに膨れ上がっていた。それでやめようって。もし、その人に会わなかったらずっと打っていたと思う。
――病院に行っても原因が分からないと言われる。ものすごく不安だったと思うのですが、当時、生きる糧として冬休みさんを支えていたものは何だったんですか?
冬休み ある日突然発症したわけだから、いつか治るはずだという希望かな。でも、20代って言ったら、みんなデートしたり、働いたり、夢を追いかけたりしてるでしょ。なんでこんなことになっちゃったのかなっていう気持ちはありました。こんなはずじゃないというか、これは自分じゃないっていう感じだよね。

