レンタルビデオ屋ののれんの奥に興味を惹かれて

――みんなは謳歌しているのに。

冬休み 娯楽もないんだから。目が回るから本は読めない。テレビは、元気な人ばっかり出てくるから頭に来るから見たくない(笑)。だから、レンタルビデオ屋さんに行ったんですよ。そしたら、何かのれんのようなもので仕切られている空間を発見したの。そこに男たちが吸い込まれていく! 女性は誰一人として入らない。

 ある日、意を決してのれんの奥に行ってみたの……まぁ~すごいのなんのって。夢のようなハーレムビデオがいっぱいあって、好奇心で見てみたんですよ。そしたら楽しくて。7本借りると何本無料みたいなシステムだったから、毎日8本ぐらい借りて、朝借りたら夜に返して、また借りるみたいな生活をしていました。1万~2万本は見たと思う。

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――絶対、店員さんから‟あだ名”を付けられてますよ(笑)。

冬休み あいつ何者なんだろうって思っただろうね(笑)。色んなシチュエーションがあるでしょ。だから、見てるだけで楽しかった。想像力の豊かさに、すごい感動したんですよね。ずっと見ているから、女優さんの声マネもできるようになってきてね。そのときはテレクラが流行っていたから、電話相手の男性に女優さんの声色を使って話しかけたりして遊んでました。それくらいしかすることないんだから。

©石川啓次/文藝春秋

――たくましすぎます。注射を打つことを止めるようになってから、症状は好転したのですか?

冬休み 打つのを止めたときに、東洋医学の先生に出会って、そこで「少しずつ薬を抜きましょう」ってアドバイスをいただいた。そのおかげもあってか、徐々に回復していって、歩けるようになりました。「どのタイミングで治ったのですか?」って聞かれるんですけど、一概には言えないんですよ。同じ症状で苦しんでいる人はたくさんいる。みんなそれぞれ理由があって、経緯も違う。悪くするのも自分、治すのも自分ということしか答えられなくて。

――いつ霧が晴れるかは分からないですよね。明日晴れる人もいれば、1年後に晴れる人、もしかしたら霧がかかったままの人もいるかもしれない。安易には言えないと。

©石川啓次/文藝春秋

冬休み そうなんです。うちのお母さんは、還暦を過ぎたくらいから耳鳴りがするということで、耳鼻科に連れて行ったんですね。最終的にがんで亡くなっちゃったんですけど、まったく本人に自覚症状がなかった。一緒にお風呂に入ったとき、お母さんのおっぱいががちがちに硬くて。それで私が気が付いて受診させたら、末期がんだって。目先だけ追っていてはいけないという教訓がありますよね。

次の記事に続く 「『雨かな』って見上げたら酔っ払いのおしっこで…」10代で暴走族に→30代でモノマネ芸人になった坂本冬休みの“壮絶すぎる下積み時代”

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