そこにいるだけで輝く存在感

『アンパンマン』のドキンちゃんのモデルが暢だったと言われている。ドキンちゃんは『それいけ!アンパンマン』のサイトに「じぶんのことを せかいで いちばん かわいいと おもっている。わがままで いつも ばいきんまんを こまらせているが、やさしい ところも ある」と書いてある。

 わがまま=これと思うと突っ走るという意味だとして、今田はのぶが世界で一番かわいいことを口には出さずとも、存在そのもので表していたのかもしれない。それでも決していやな感じがしない。ネガティブ要素はその輝きで打ち消してしまう。それが今田美桜なのだ。

今田美桜 ©時事通信社

 嵩を演じた北村匠海はインタビューで、今田美桜によって「僕がやったことは間違いではなかったかもしれない」と自己肯定感を高められたと語っている。彼は、『あんぱん』に参加するにあたり、楽屋で過ごさず、スタジオの前の前室というスペースで常にスタッフ・キャストとコミュニケーションをとろうと心がけた。

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「そうしたら、自然と今田さんもいるようになって、気づけば河合優実さんや原菜乃華さん、高橋文哉君、大森元貴さんまで参加してくれて。基本的には僕ら同世代のキャストはみんな前室にいるようになったんです。河合さんが今田さんは守り神のように前室にずっといたと言っていましたが、今田さんはもしかして僕と足並みを合わせてくれたのかなと思って。のぶと嵩が最初は心の距離があったものが徐々に近づいていって同じ家で生活していくような物語とまさにリンクしている気がして」

 

(出典:ダイヤモンド・オンライン『「何のために生まれて」――嵩役・北村匠海が“アンパンマンの問い”に見つけた、自分だけの答え』2025年9月12日)

「守り神のように前室にずっといた」と聞いてそっと誰かの傍らでニコニコしている今田を想像するのは難しくない。例えば、直近だと今田がアンバサダーとして出演した『東京2025世界陸上』。ここで彼女は織田裕二と応援サポーターKの間に立ってふたりが話すたびに左右に顔を振りながらうんうんと神妙にうなずいていた。誰かがなにか無茶振りすると「アハハ!」と明るく笑う表情に空気が和む。

『東京2025世界陸上』公式サイトより

『情報7daysニュースキャスター』に出演した際は三谷幸喜と安住紳一郎の無茶振りを「アハハ」とかわしていたことがネットニュースになったが、『あんぱん』の取材会でも男性記者が「たっすいがー」と自分に言われているようだったと感想を述べると「アハハ」と笑って受け止めていた。この「アハハ」が決して相手を軽んじず、さも楽しそうで、発言した側が楽になるようなほどよい塩梅なのだ。このリアクションは今田美桜の強みである。決して悪い意味でなく、最高のリアクション笑顔を心得ていると思う。

 おそらく『あんぱん』ののぶもそうだ。自分の優秀さを生かそうとがむしゃらにならなくても、間違えたことをしてしまっても、家事が得意でなくても、そこにいるだけでいい。そういう人物が皆に愛される主人公になり得ることを示してくれた今田美桜、『あんぱん』を経て彼女はまだまだ高く飛べる。

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