2025年のブナは「大凶作」

クマの個体数の増加とともに、被害急増の理由として指摘されるのが「異常気象によるエサ不足」だ。

猛暑や長雨等でクマの主なエサであるブナやナラの実が不作になると、エサ不足に陥ったクマが人里に出没するというわけだ。

東北森林管理局のHPに掲載されている「ブナの開花・結実調査」を見ると、平成元年以降、不作の年がかなり多いことが分かる。

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同HPの「これまでの豊凶割合」によれば、「大凶作」が39%、「凶作」が31%と、実に70%の年で並以下の作況となっている。

これは東北に限ったデータだが、全国の作況も似たような傾向だと想定していいだろう。

ちなみに、林野庁東北森林管理局によると、2025年のブナは「大凶作」となっている。例年、クマによる被害は10月がピークとされる。冬眠前にできるだけ多くのエサを集めようとクマの活動が活発化する時期であり、かつ、秋の行楽シーズンで多くの一般客が登山やキャンプなどに出かけるからだ。

現在のブナの作況を考えると、クマによる被害が今後多発することは想像に難くない。

クマ対策の行く末は

それを裏付けるかのように、クマの出没が相次いでいる。富山県の立山・室堂平周辺では9月8、9日の2日間にわたって1日3件のクマ目撃情報があり、立山への登山ルートを一部閉鎖したという。

富山県では8月19日にも有峰のキャンプ場でクマが出没し、キャンプ客のテントや食料を持ち去っている。

北海道恵庭市では9月10日、国道453号線の脇に設置された柵の上を悠然と歩くヒグマの姿が撮影され、住民にショックを与えた。

福島県南会津町では9日、国道289号を走行中の救急車がクマと衝突する事故が発生している。幸い救急搬送中でなく怪我人もなかったが、一歩間違えれば大事故につながっていただろう。

8月14日に発生した羅臼岳の事故以来、死亡事故こそ発生していないものの、人身被害は継続的に起きている。東京都奥多摩町では8月23日に釣り客がクマに襲われ顔に怪我をしたほか、岐阜県中津川市では9月2日、帰宅途中の高校生がクマに襲われ怪我を負い、現地では集団登下校などの措置をとっているという。