テスタ もちろん、体はめちゃめちゃ疲れますけど、楽しいんです。僕は株って「世界最大のオンラインゲーム」だと思っていて。世界の経済と密接にリンクしていて、世界中の投資家がリアルマネーをつぎ込んで真剣勝負を繰り広げている。

  しかも、株を始めて20年経ちますけど、未だに予期しないことが起こりますからね。今年の4月のトランプショックだって、アメリカの大統領が「関税上げます」と言って、世界市場が大暴落してしまう。

  地震や戦争の影響ならまだしも、完全に人災じゃないですか。こんな斜め上のほうからショックがもたらされるのかって。でも、だからこそ面白くもあるし、これ以上楽しいことなんてないって感覚だから、飽きないし、苦でもないんでしょうね。

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©︎文藝春秋

――2014年、2015年も着実に利益を増やしたテスタさんですが、2016年の年明け、これまでで最も悔しい負けを経験したそうですね。

テスタ さくらインターネットですね。あれは本当に辛かったです。2013年に資金がすごく増えてデイトレでは回せなくなったので、時間軸を伸ばした取引をするようになったんですけど、その分野では僕は初心者だったわけです。

  そのくせ資金はそれなりに持っていたので、驕りがあったんだと思います。何年も株をやってきて、毎年勝ってきて総利益5億も突破して、どこか緩んでいたというか。自分の得意なスタイルではなく別の領域なのに、謙虚さがなかった。それで大失敗してしまったという。

「『待っていれば、いずれ下がるだろう』と思っていたわけですが、要は下手だった」

――さくらインターネットの当時の株価の動きを見ると、2015年の年末から2016年の1月半ばにかけて急騰しています。テスタさんはどこかでさすがに下がるだろうと読んで空売り(株価が下がることを狙った信用取引の一種)を仕掛けたら、さらに上昇してしまったということですか?

テスタ まさに、そうです。どこかで大きく下がって元に戻るだろうと思って空売りを続けていたら戻らなくて、含み損が1億まで膨らんでしまって。

  買いの場合は投じた金額以上の損はしませんが、空売りだと株価が上がっただけ無限に損失が膨らみます。ここから株価が3倍、5倍、10倍になったら、破産しちゃうかもしれないなって、さすがに怖くなりました。

  僕は今でもそうなんですけど、年間の収支でマイナスが一度もないんです。だから、「ついに連続プラスが途切れてしまう」とか、前年の利益が1億3000万だったから「それも吹っ飛んでしまう」とか、いろいろな葛藤があって、なかなか切れなかった。「待っていれば、いずれ下がるだろう」と思っていたわけですが、要は下手だったということです。

 

――最終的にどうなったんですか?

テスタ あの頃は毎日さくらインターネットのことばかり考えていて、何度も何度も調べて、「絶対に下がるはずだ」と自分に言い聞かせていました。

  あの1週間は人ともほとんど話していないと思います。胃もずっと痛くて体調がおかしくなって、ある日、血尿が出たんです。それで「さすがにもう無理だ」とマイナス1億円を受け入れて、損切りする決断をしました。