少年2人が取り囲み、1人が羽交い締めにし1人が殴るけるの暴行を働いている――SNSで「いじめ動画」を発見した、当時13歳の少年。正義感にあふれた彼は、いじめっ子の家族に動画のことを密告する。ところが、これが悲劇の始まりだった……。
2021年(令和3年)にイギリスで起きた事件を、我が子を無惨に殺された親、学生時代ひどいイジメに遭った者などが仕返しを果たした国内外の事件を取り上げた新刊『世界で起きた戦慄の復讐劇35』(鉄人社)から一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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いじめを密告→殺される事態に
本章で紹介してきたのは、いじめの被害者が加害者に復讐を果たした事件である。が、本稿はいじめをチクった側がチクられた側に殺害されたケースだ。しかも、両者は犯行のときまでSNSでやり取りしていただけで、一度も対面したことがなかった。2021年にイギリスで起きた逆恨み復讐事件の恐るべき顛末。
後に殺害されることになる中学生オリー・スティーブンス(2007年生)はイギリス・バークシャー州レディングの郊外、エマー・グリーンに住んでいた。自閉症を患っていた彼には、明日の学校の準備を終えてから寝るまでの間、自宅のベッドで日課にしていたことがあった。スナップチャットだ。写真や動画を投稿したり、見知らぬ者同士がチャットで会話ができるSNSで、イギリスではティックトックと並び12歳~17歳までの半数以上が利用していると言われる。
2020年12月のある日の夜、オリー(当時13歳)はいつものようにスマホでスナップチャットの画面をスクロールしながらユーザーの投稿を眺めていた。と、そこに1本の動画が目に飛び込んできた。自分より少し年下に見える少年を年上の少年2人が取り囲み、1人が羽交い締めにし1人が殴るけるの暴行を働いている。
被害者の少年は地面に押し付けられ立ち上がれない状態。少年2人はその様子を見ながら笑い転げている。実に胸糞悪い動画である。もっとも、こうしたいじめの動画がタイムラインに流れてくることは決して珍しくなく、普段なら嫌悪感を覚えスルーするところだ。が、その日のオリーにはなぜか加害者の少年を決して許せないという強い正義心が生まれる。
ちなみに、2020年当時、イギリスにオンライン法案はなく、暴力行為や犯罪行為を含む不適切な投稿も野放しの状態だった。
オリーは当動画の投稿主のアカウントから交友関係を探り、加害少年の1人の兄のアカウントにたどりつく。そして動画のURLとともに、メッセージを送信する。
〈あなたの弟がいじめの動画をSNSにアップしています。見ていて気持ちの良いものではないので注意していただけないでしょうか?〉
これが悲劇の始まりだった。
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