右派、保守派からもキンメル追放への反対意見が上がるという意外な展開もあった。元フォックスニュースのキャスターであるタッカー・カールソン、民主党/リベラルに強硬な姿勢を示すテキサス州選出の上院議員テッド・クルーズ、右派インフルエンサーのベン・シャピロが声を上げた。

 キンメルの発言を批判し、かつトランプへの直接非難を避けつつも、「キンメル追放を容認するとFCCからメディアへの干渉が強まり、やがてヘイトスピーチ法が作られ、つまりは右派の発言も規制される事態になる」などと警告した。

キンメルは1週間で番組に復帰し…

 ディズニーは抗議の規模の大きさに折れたのか、キンメルは「無期限停止」から1週間後の9月23日、番組に復帰した。当初、ネクスター、シンクレアの2社は所有するローカル局での放映を行わなかったが、26日より全局での放映再開とした。

ADVERTISEMENT

 これには24日に放映されたアニメ『サウスパーク』最新エピソードの影響もあったと思われる。同番組は4人の小学生男子を主人公としながらも、実際の出来事に基づいた強烈な社会風刺で世相を斬る大人向けの番組。特に現在放映中の第27シーズンではトランプ大統領とその政権の揶揄にフォーカスしており、ほぼ毎回、トランプのキャラクターは全裸姿で登場する。

アニメ「サウスパーク」公式サイトより

 その『サウスパーク』は第5話にゲスト・キャラクターとしてFCC委員長のブレンダン・カーを登場させた。トランプの自己中心的な企みの巻き添えとなって満身創痍となったカーは口も動かせず、従って話すことができず、医師に「言論の自由を失うかもしれない」と告げられてしまうというストーリーだ。

「FCC委員長は言論の自由を失うかもしれない」というセリフが登場(『サウスパーク』公式Xより)

「この番組を放送できる国に住んでいることが重要」

 9月23日のカムバック初日、ジミー・キンメルはいつものようにジョークを織り交ぜながらも自分を支持してくれた多くの人々に感謝し、途中、感極まって声を詰まらせた。トランプが他のトークショーもキャンセルさせたいとポストしたことについては、高額なギャラを得ている番組ホストだけでなく、番組スタッフとして働く何百人もの人々の生活を脅かすことになるのだと批判した。そして、こう語った。

「この番組は重要ではないのです。重要なのは、私たちがこのような番組を放送できる国に住んでいることなのです」

ジミー・キンメル氏番組復帰後の放送回はYouTubeでも配信され、2200万回以上再生されている(YouTue「Jimmy Kimmel Live」より

 この日の『ジミー・キンメル・ライヴ!』はネクスターとシンクレアによって系列局の20%でしかオンエアされなかったにも関わらず、通常の4倍に相当する620万人の視聴者を得たのだった。(文中敬称略)

次のページ 写真ページはこちら