「うわぁ、海の宝石箱や~!」の名フレーズが生まれるまで
――唸らされますね。
彦摩呂 食べ物にも顔があるんですよ。ソースがかかってるほうを、レンズ側に向けるとか。チーズがかかってるのに、チーズがかかってるほうを自分に向けて、「このチーズが」って言ってもダメじゃないですか。
だけど、いろいろ技を編み出してきたものの、いまいち面白みがないなと。そつなくやってるし、怒られないし、「さすが彦摩呂さん、上手やね。きれいに食べるね」って言われる。お刺身なんかでも、ワサビ醤油を溶かないで、お刺身の上にちょぼっとワサビを乗せてきれいに食べるとか、そういうことを細かくやってたので喜ばれてはいたんですよ。
だけど、自分で映像を見ても、なんだか心に引っ掛からないんですよね。僕がそうなんだから、テレビを見ている人たちは、もっと心に引っ掛かってないだろうと。「なにが原因だろう」と考えてに考えて「コメント力だ!」って。さくさく、ふわふわ、ジューシー、甘い、うまい、辛い、これだけだと限界があるんです。
――グルメリポーターとしての味は出てきたけど、コクがなかった。
彦摩呂 そうなんですよ。エッジが効いてないというか、自分らしさを出せてない。「僕ならではのキラーコメントが欲しいな」って、悩みに悩みました。オリジナリティなものがないのが、ものすごくつらかったですね。
――悶々とするなか、「うわぁ、海の宝石箱や~!」という海鮮丼を紹介する名フレーズが生まれた。
彦摩呂 2005年に言うたんですよ。今年で20周年。アニバーサリーなんです。しかも流行語大賞に入ったりしなかったから、懐かしのフレーズみたいにならずにずっと使い続けることができてますからね。
『土曜スペシャル』(テレビ東京・1986年~)で言ったのか、『NNNニュースプラス1』(日本テレビ・1988年~2006年)の特集コーナーで言ったのか。どの番組で言ったのかまでは覚えていないんですけど。
――あれはパッと浮かんだんですか?
彦摩呂 浮かんだんですよ。そう見えたんですもん。
ライトが当たってる刺し身がキラキラしてて、鯛がオパール、鯖がサファイア、イクラがルビーに見えたんやもん。
それ見たら、思わず出たんよね。「うわぁ、海の宝石箱や~!」
