満腹神経を自分で壊してロケに臨む
――出されたものは完食を。
彦摩呂 若いころは完食していましたけど、最近は食べられる量だけいただくこともあります。
褒めたあとに残すと、お店の方に「ほんまはおいしくないのに、無理してコメントしたんかな」と思われるじゃないですか。そやから、「ロケだけど、僕は本当においしいからこれを食べるんだ」という責任を取る意味でも完食してましたね。
昔は痩せてたから、「来月から出す新メニューがあるんです。こっちも食べてください」とか、いっぱい出していただくことがありましたけど、いまはお店のほうが気を使って出さないようにしてくれますね。「彦さん、次があるでしょ」って。
――体が大きくなったのを自覚したのは、いつぐらいですか。
彦摩呂 32~34歳あたりで「ちょっと太った?」って言われ出して、36歳ぐらいからバッと太って。
メッチャ忙しくなった時は、朝から晩まで出るのがすべて食べ物の番組なんですよ。歌手は売れると喉を壊すでしょう。役者は売れるとメンタルが疲れるでしょう。グルメリポーターは売れると太るんです。
「スケジュールが空いてないです。この日、始発で大阪行かなきゃダメなんです」って断った仕事があったんですけど、それでも「2時間でいいからください。2時間でいいんです。どうしても彦摩呂さんにやってもらいたいんです」って言われて。
そこまで言ってくれたら「じゃあ、しょうがない」ですよ。で、未明の4時から朝の6時の2時間で、銀座のフレンチのフルコースを食べました。そのまま新幹線に乗って、大阪へ。
――どうかなりませんか?
彦摩呂 満腹中枢が壊れて……というか、自分で壊したんです。これはプロ意識ともいえるけれど、同じ番組で5軒ぐらいお店を回って、5軒目が編集上1軒目に来る場合があるんです。
そうすると、「もう、お腹いっぱい」の顔して番組が始まることになるんです。それは番組上の時系列としてダメじゃないですか。だから、すべて「今日、はじめて食べるご飯」という顔でロケに行くようになるんです。そうやって脳に信号を送っていると、お腹いっぱいとかあんまり感じなくなってくる。
だから、1日に1万キロカロリー食べている日なんてザラにあったと思います。その結果、体の重さでパイプ椅子を壊しちゃうんですけどね。
写真=三宅史郎/文藝春秋
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