黒い額縁に大切そうにおさめられた、赤字の「背番号17」のユニフォーム。その傍らで、坊主頭の大男が満足げに笑みを浮かべる。

「これはイッペイがくれたんだ。特別かって? まあ俺とイッペイの関係だからね。実は、大谷のサイン入りなんだ」

大谷が相棒を失った事件

 そう明かすのは、大谷翔平の元通訳・水原一平に大金を賭けさせた胴元の米国人、マシュー・ボウヤー氏(50)だ。有罪判決で収監直前の身だが、「週刊文春」の取材申し込みに応じたのだ。(全2回の1回目/続きを読む

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大谷グッズを記者に自慢

 9月1日(日本時間)、ビデオ通話によるインタビューを行った。何を語るつもりか――記者が身構える間もなく、背後にチラチラと映り込む大谷グッズの自慢が始まったのが冒頭だ。

「見てくれよ、エンゼルス時代だ。3年ほど前かな、『息子のために大谷のサインがほしい』とイッペイに頼むと、『ノープロブレム』と快く引き受けてくれた。

『キングストン(ボウヤー氏の息子)へ、大谷翔平より』って書いてあるんだ。俺はお礼に、イッペイに無料で賭けさせてあげたのさ」

ビデオ通話で語るボウヤー氏

 ひと呼吸おいて真顔に戻ったボウヤー氏に事の発端から訊くと、詳細な「激白」が始まった。

「あんな賭け方するやつ初めて見たよ」

――水原との出会いは?

「俺がイッペイに初めて会ったのは、2021年9月のポーカーゲームでのことだった。デビッド・フレッチャー(元エンゼルス)や俺の友達がいて、それぞれ1000ドルから2000ドルぐらい賭けていた。

 ピザを食べながらリラックスした雰囲気。イッペイはその合間に、手元のスマホでサッカー賭博をしていた。そこで賭博を運営する俺と連絡先を交換することになったんだ」

©文藝春秋

――水原はすぐに、あなたの客になったのか?

「イッペイは数日以内にアカウントを作成して、すぐに始めた。最初は小口で1ゲーム1000ドル程度。でも6週目ぐらいの頃、『こいつはギャンブル依存症だ』と気付いた。真夜中に世界中の誰も知らないサッカーリーグに賭けていたんだ。200万ドル勝ったり負けたり、めちゃくちゃだった。

 彼が俺のサイトで賭けた合計回数は19000回以上。俺自身、胴元でもギャンブラーでもあってこの世界に30年いるが、あんな賭け方するやつ初めて見たよ」

――では、水原からあなたへの負債が膨らんだ理由は。