ポスト藤井世代をどう育てたか
「弟子が上がったことについてはホッとしたということにつきますね。自分の責任を果たせたと思います。
岩村、片山ともに私が江古田で主宰している将棋教室の卒業生でした。2人とも教室に来たのは同じころで、片山は小学2年で2級と認定、岩村は幼稚園の年長で6級と認定しました。
片山は元々、藤田麻衣子先生(元女流棋士)の初心者教室の生徒で、うちは初心者だけではなく有段者もいるので紹介されました。藤田先生からも聞いていましたが、片山は当時から一生懸命指していましたね。岩村はその頃から詰将棋を解くスピードが速かったです」
片山の奨励会入りが2015年9月、岩村の奨励会入りが2017年9月。15年の10月は藤井聡太が三段に昇段して関係者の中で注目を集め始めた時期であり、17年はデビュー29連勝というブームの極致にあった時期だ。そのような状況でポスト藤井世代の棋士を育てるということについてはどうだろうか。
「藤井さんの存在は大きいですよね。弟子には藤井将棋の指し手については言及しましたが、出世スピードなどについての話はしませんでした。すごすぎますから。
奨励会に入ってからは月に1回指すくらいで、あまりアドバイスはしていません。2人に関しては優秀で言うこともあまりなかったです。藤井さんとは比べなかったですが、自分の昇段スピードとは比較しました。2人とも中学生で三段に上がったのはすごいんですよ(飯塚八段の三段昇段は20歳で、22歳の時に四段昇段)。
三段リーグは技術が高いもの同士が闘う戦場で、他の三段も必死ですから大変ですよね。2人とも三段から四段まで時間はかかりましたが、前に進んでいます。三段昇段当時と比較して明らかに強くなっていますから。
三段に上がった当初は盤を挟んで、ちょっと自分が分が悪いくらいでしたけど、今はほとんど勝てていませんから。自分の三段時代の棋譜と見比べても全く違います。序盤の知識が違うのはわかっていましたが、中盤の大局観や寄せの技術も全く違っています」
改めて、プロとしての弟子2人にどのような期待をかけるか。
「2人とも、自分なりの考えを持っているので、それを育んで棋士として形にしてもらいたいですね。盤上で自身を表現できるようになってもらいたいです」
写真=相崎修司




