10月1日付で将棋界に4人の新四段が誕生した。岩村凛太朗(19)、生垣寛人(22)、片山史龍(21)、山下数毅(17)というニューフェイスである。前期と今期の竜王戦で活躍した山下がランキング戦で連続昇級を果たしたことから、片山ともども次点2回によるフリークラス編入の権利を得て行使したことにより、4人の新人棋士が誕生した。
三段リーグがない時代の1980年度には8人の新四段が誕生したこともあったが、その時でも同日付で3人以上の棋士が誕生したことはない。今期の三段リーグは稀に見るレアケースだったと言える。
正午を過ぎても急所の対局が終わらず
9月6日に行われた第77回三段リーグ最終日、この日の開始時点では13勝3敗の(22)岩村が単独トップ(括弧内はリーグ順位、以下同)で、12勝4敗の(13)片山と(31)入馬尚輝が追う形だった。11勝5敗で続くのは(8)の生垣、(20)の北村啓太郎。10勝6敗の面々にも可能性はあったが、事実上はこの5人に絞られていた。特に上位2名の岩村、片山はすでに次点1回の経験もあったので、フリークラス編入も含めると、この時点でプロ入りの可能性はかなり高かった。
筆者はこの日、別件の取材があったこともあり、昼前から将棋会館にいた。午後1時過ぎに日本将棋連盟の職員と話す機会があったので、それとなく様子を聞いてみると、まだ全然決まっていないということだった。その後、休憩室を覗いてみると多くの奨励会員がいたので、急所の対局が長引いていたようである。
果たして上位5人のうち、第1局を勝ったのは岩村、片山、生垣の3人。この時点で岩村の2位以内が確定したので四段昇段が決まった。また片山も3位以内は確定したので、事実上プロ入りが確定した。あとは生垣と片山の争いである。最終戦で生垣勝ち、片山負けという結果のみ、生垣の逆転昇段が決まる。
控室では“もう一つの話題”が
夕方になり、報道陣も集まってきた。控室での話題は片山と生垣の2位争いだが、もう一つ。山下が最終戦を勝つかということである。
山下は第73回リーグで1つ目の次点を獲得していた。そして奨励会三段として参加した今期の竜王戦5組で4組昇級を決めたことにより、2つ目の三段リーグ次点が付与されることになった。事実上の四段昇段確定である。
ただしこの2つ目の次点は、進行中の三段リーグで降段点を取らないことが条件になっていた。三段リーグの降段点は4勝(14敗)以下なので、降段点回避はそれほど難しいことではない。ましてや1度目の次点獲得以降、昇段には至らずとも毎回2桁勝利を続けていた山下が降段点を取ることなど考えられなかった。





